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20XX/03/26 渡り鳥の群れ

 
《世界が終わるまで363日》
 
昨日の探索の成果:携帯DVDレコーダー。
中に入っているDVDには、渡り鳥の群れの映像が十分間だけ録画されていた。
ノイズ混じりの映像をぼんやりと眺める。
 
「カイエダ、これ何て鳥?」
「判るか」
 
カイエダは、壊れたランプを直そうと躍起になっている。
それも昨日瓦礫の中から拾い上げたものだ。
直せば、夜も随分と明るくなるとカイエダは言っていた。
今は、懐中電灯で闇をしのいでいる状態だ。
 
「鳥ってまだいんのかな」
「大抵は逃げただろ」
「逃げたってどこに。逃げる場所なんてないじゃんか」
「知るか。動物は俺らよりかは賢いんだよ」
 
カイエダは、ちらりとこっちを見ようともしない。
それが無性に寂しくて、カイエダの指先をそっと掴む。
 
「何だ、邪魔すんな」
「相手してよ」
「赤ん坊じゃねぇんだから」
 
カイエダが呆れたように肩を竦める。
そう言いながらも、カイエダは手を止めてハマの方を向いた。
カイエダは優しい。
たぶん、ハマが今まで出会った人間の中でも一等優しい。
 
「手ぇ繋いで?」
「何でだ」
「何でだろ。何となく、さみしいからかな」
 
両手を掴んで、ゆらゆらと左右に揺らしてみる。
カイエダはため息を吐きながらも、ハマの好きなようにさせてくれた。
DVDの映像では、渡り鳥たちが悠然と空を飛び回っている。
人間も昔はこうだった。
地面を覆い尽くすぐらいたくさんいたのに、今はもう姿も見えない。
掴む手はもうこの二本しかなかった。
それが寂しくもあったけど、心細くはなかった。
 
「もう寂しくなくなったか?」
 
カイエダが問い掛ける。ハマは首を傾げた。
 
「カイエダは?」
「あ?」
「さみしくない?」
 
一瞬の沈黙。
カイエダは黙ってハマを見詰めた後、ぎゅうっと力を込めてハマの手を握り返してきた。
ノイズ混じりの映像の中では、空を埋め尽くすように渡り鳥の群れが飛び回っていた。
 
 

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Published in 世界が終わるまで365日

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