Skip to content →

20XX/03/28 引き裂かれるような

 
《世界が終わるまで361日》
 
心が引き裂かれるように、美しい光景だと思った。
瓦礫の上に、突き抜けるような青空が広がっている。
人が消えた世界の空気は澄み渡っていた。
目に滲みるような鮮やかな青が残酷で、肺に潜り込む清らかな空気は息苦しかった。
まるで、この世界にまだ人間が居続けることを否定されているようで。
 
「ハマ、行くぞ」
 
うん、と短く答えて、差し出される手を掴む。
カイエダが瓦礫の上から、ハマの身体を引っ張り上げてくれる。
 
「今日はどこまで行くの?」
「南西だな。一年前は渋谷軍が駐屯していたから、基地に食料を溜め込んでた可能性がある」
「渋谷軍って巣鴨軍と戦ってたところ?」
「誰とでも戦ってた」
 
苦々しくカイエダが答える。
戦争は国だけの単位に収まらなかった。
県や市や町や村単位で、人間は争い続けた。
無数の軍隊が生まれて、幾万の兵士が戦い続けた。
カイエダもその一人だ。
カイエダは高校生の頃に徴兵された。
学校の教室で、友達と古典の授業を受けていたところに兵士達が雪崩れ込んできた。
そのまま、拉致同然に軍隊へと入れられて、人を殺す方法を学ばされたと言っていた。
家族には二度と会えなかった。
一緒に徴兵された友人達は、一ヶ月も経たずにみんな死んだ。
その時から、カイエダは安易に希望を持ったり、無闇に絶望をしたりするのをやめた。
 
「カイエダ、もう銃持つのやめなよ」
 
カエイダの左肩にはAKM2が掛けられている。
右手は、ハマの掌を握り締めている。
生と死を同時に掴むカイエダの掌がハマは時々怖い。
 
「いつか、な」
 
いつかっていつだよ、そう愚図りたくなるのをハマは堪える。
手を引かれるままに歩き続ける。
このままどこに辿り着くんだろうと考えた。
天国だったらいいな。
青い空を見上げながらそう思うと、心が安らいだ。
 
 

backtopnext

Published in 世界が終わるまで365日

Top