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14 汚れる *R-18

 
 細い手首を鷲掴んで、強引に引っ張る。ノアの小さな身体は、雄一郎の手に引き摺られるがままに動いた。
 
 天蓋のついたベッドへとノアの身体を放り投げる。仰向けに倒れたノアの上に、間髪入れず雄一郎はのし掛かった。ノアは酷く狼狽した表情で雄一郎を見つめている。その現状を理解し切れていない眼差しに、雄一郎は小さく笑った。
 
 
「これじゃ俺がレイプするみてぇだな」
 
 
 いや、実際レイプになるのか。年増の痴女が初々しい若者を逆レイプするのと同じ、何とも浅ましい行為だ。
 
 強張ったノアの頬をするりと手の甲で撫でながら、雄一郎は独りごちるように呟いた。
 
 
「ついでに、未成年への淫行罪か?」
 
 
 元の世界であれば懲役何年ぐらい食らうのだろうか。頭の端でそんな妄想を巡らせていると、すぐ背後から声が聞こえた。
 
 
「ノア様は、すでに成人されてますよ」
 
 
 声と共に、ひたりと吐息がうなじに触れる。テメレアが雄一郎の肩に両手を置いて、ぴったりと背に密着していた。肩に置かれていた掌は、すぐさま雄一郎の胸元から下腹を隠微に撫で始める。そのくすぐったい感触に僅か身を捩りながら、雄一郎は問い掛けた。
 
 
「お前たちの世界での成人は何歳なんだ」
「十八です」
「は、ぁ?」
 
 
 思わず驚きの声が隠せなかった。組み敷いたノアを見下ろす。どう見ても、目の前の少年は十三か十四程度の年齢にしか見えなかった。
 
 
「私たちは雄一郎様の世界の人間よりも長寿なんです。二百まで生きる者もおりますし、私も四十七の年です」
 
 
 女神様の本に書いてありませんでしたか? と続けて問われるが、雄一郎は唇をあんぐりと開いたまま言葉も返せなかった。見た目は二十半ばにしか見えないテメレアが自分よりも年上などとは想像だにしていなかった。
 
 まじまじと眼下のノアを見つめる。ノアはようやく硬直から溶けてきたのか、左右を囲う雄一郎の両腕を押して、か細い声をあげた。
 
 
「ど、どけよ」
「なぁ、お前、十八なのか?」
 
 
 現状にそぐわぬ雄一郎の暢気な問い掛けに、ノアは一瞬躊躇いを見せた後、強張った頷きを返した。まるで狼の牙を恐れる兎のような仕草を見つめながら、雄一郎は平然とした声で続けた。
 
 
「童貞か?」
 
 
 童貞という言葉は、果たして『チューニング』が合ってるのだろうか。自身の言葉に緩く首を傾げたが、朱色に染まったノアの顔色がすぐにその答えを教えてくれた。
 
 
「お前に、関係ないだろっ…!」
 
 
 羞恥と怒りに上擦ったノアの声に、自分でも腐ってると思いながらも笑いが滲み出した。
 
 
「記念すべき筆下ろしが男相手で気の毒にな」
 
 
 ふ、ふ、と息を吐くような笑い声が咽喉から零れ落ちる。嗤う雄一郎を化け物のように見上げて、ノアが唇を上下に数度震わせた。だが、その唇から言葉は漏れない。
 
 背後から、テメレアの唇が首筋を這うのを感じた。生ぬるい粘膜がぬるりと頸動脈を舐めあげる感触に、ぞわりと腹の底から隠微な熱が這い上ってくる。
 
 
「でも、安心しろ。大抵の奴は、初体験なんてろくでもない思い出だ」
 
 
 これは慰めになるのだろうか。それとも、今のノアには皮肉に聞こえるだろうか。
 
 口に出した瞬間、ノアがベッドから逃げ出そうと一気に暴れ出した。焦燥にかられた表情。跳ねるノアの両腕をベッドに縫い付けて、雄一郎は悪い子供を窘めるような声音で呟いた。
 
 
「いい加減に諦めろよ。俺は、こんな訳わかんねぇ世界で人殺しを引き受けて、ついでにガキまで作るって諦めてんのに。お前は何にもしねぇつもりか。他人に汚れ役押しつけて、自分だけは綺麗なままでいるつもりか」
「ぼ、僕は、そっ、そんなつもり、は…」
「なぁ、王様。お前も汚れろよ」
 
 
 残酷な言葉を突きつける。ノアが目を見開いて雄一郎を凝視する。その透き通るように蒼い瞳を見返して、雄一郎はそっと囁いた。
 
 
「一緒に汚れろ」
 
 
 優しく地獄へ引きずり込むような雄一郎の声音に、掴んだノアの両腕がぶるぶると戦慄く。それから、不意にノアの全身から力が抜けた。ベッドに仰向けになったまま、ノアは目蓋を固く閉じている。まるでこの世のすべてに耐えるかのように。
 
 片手を上げて、閉ざされたノアの目蓋を緩くなぞる。指先に微かな水の感触。涙、と上の空で思う。僅かな水滴を指先で払いながら、雄一郎は肩越しにテメレアを見遣った。
 
 
「俺は酷いか?」
 
 
 今更なことを無感動に問い掛ける。テメレアは僅かに眉尻を下げて、首を曖昧に振った。
 
 
「今行うか、いつか行うかの違いだけです。結果は変わりません」
「意外だな。お前は“ノア様”を守ってやるのかと思っていた」
 
 
 途端、はは、とテメレアの笑い声が聞こえた。その想像よりも愉しげな笑い声に、一瞬神経がざわつく。
 
 
「表裏一体なんです」
 
 
 雄一郎の肩口へと唇を押しつけて、テメレアが独り言のように呟く。だが、その意味は解らなかった。は、とテメレアの熱い息が耳へと吹き込まれる。
 
 
「いい加減、貴方に触ってもいいですか。もう限界です」
 
 
 テメレアの掌が太股の内側に触れる。そのまま這い上った掌は、雄一郎の性器へと伸ばされた。布の上から、明らかに女よりも大きな掌に性器を揉まれる感触に鳥肌が立つ。嫌悪と高揚が入り交じる感覚に、唸り声と一緒に反吐が出そうだった。
 
 
「くそ、ゲロ吐きそうだ」
「吐かないで下さい」
「そもそも男同士で、どうやってガキを作るんだ」
 
 
 今更ながらの疑問を投げ掛けると、ノアは手を伸ばしてサイドテーブルの引き出しから一本の瓶を取り出した。中には、果肉混じりのねっとりとした桃色の液体が入っている。先ほど雄一郎が飲んだ液体に似ていた。
 
 
「男性の場合は、シャグリラの実を摂取し続けることによって体内に仮子宮が形成されていきます。先ほど薄めた液体を飲まれたかと思いますが、経口摂取であれば一年以上。直腸吸収であれば、毎日かかさず行えば数ヶ月で妊娠可能になります」
「そんなもんを何の説明もなしに人に飲ませたのかよ」
「説明してもしてなくても、貴方は飲むと思いましたので」
 
 
 しれっと酷薄なことを言うテメレアを肩越しに睨みつける。だが、テメレアは平然とした顔を崩さない。
 
 
「つうか、数ヶ月もかかるのか。さっさとヤること済ませて、戦うことに集中したいんだが」
「腹に子を抱えたまま戦うつもりですか」
「さっさと元の世界に戻りたいんでな」
「なぜですか」
「待たせてる奴がいる」
 
 
 雄一郎の言葉に、テメレアは露骨に眉に顰めた。僅か憎々しげに雄一郎を見据えた後、テメレアは不意に雄一郎の肩に噛み付いた。痛みに顔を歪める。
 
 歯形が残るほどの力で噛みついた後、テメレアは唸るような声で呟いた。
 
 
「ここにいる間は、その誰かのことは忘れて下さい」
 
 
 無理だ、と答えることはできなかった。テメレアの手が再び雄一郎の性器を揉み込み始める。
 
 四つん這いになった身体を猫のように丸めて、雄一郎は短く息を零した。目線を落とせば、そこには置物のように固まったノアの姿が見える。ノアはまだ目を閉じている。悪夢から目を背けるように。
 
 可哀想に、と頭の片隅で良心が囁くのが聞こえた。大人げない、残酷だ、ということは重々承知している。だが、今更逃がしてやるつもりはなかった。
 
 
「ふ…、ァ…」
 
 
 テメレアの手の動きが直接的になってくる。下衣から潜り込んだ掌が性器を直接なぶっていた。竿を握り込まれて上下に扱かれ、親指の腹で濡れ始めた先端の鈴口をぐぢぐぢと弄られる。
 
 は、はっ、と呼吸困難の犬のような息が漏れる。頭の芯が痺れて重たくなって、物を考えるのが億劫になってくる。下腹部で膨らむ快感に、内腿がぴくぴくと痙攣しているのが解った。
 
 
「一度出しますか」
「そういうの、いらねぇから。さっさと済ませろ」
 
 
 恋人同士の愛の営みでもあるまいし。事務的な雄一郎の言葉に、テメレアは、そうですか、と不機嫌そうに返した。
 
 次の瞬間、一気に下衣が引き摺り下ろされた。下着も一緒に下ろされたのか、剥き出しの尻にひやりとした空気を感じる。ぬるりと潤った指先がすぐさま尻の狭間へと滑らされた。どうやら、先ほどのシャグリラの液体を塗りつけられているらしい。尻の皺ひとつひとつに粘液が塗られる感触に、爆発しそうに羞恥が込み上げてくる。
 
 
「っ、ヴぅ…」
 
 
 唸り声を噛み締めた。頭の中で素数をひたすら数える。少しでも正気にかえってしまったら、テメレアをぶん殴ってこの場から逃げ出してしまいそうだ。
 
 
「こちらの経験はあるのですか」
「あると、思うのか」
 
 
 口の端に嘲りが浮かぶ。
 
 
「貴方は男性に慕われそうなので」
 
 
 誉めているのか、それとも小馬鹿にしているのか解らない。
 
 咽喉が怒りでグルルと震えた瞬間、腹の内側に指が潜り込んできた。ずるりと長い指が狭い粘膜をかき分けて、奥へ奥へと進んでいく。その薄気味悪い感触に、がくんと頭が揺れた。額が固いものに当たる。ノアの薄い胸元へと額を押しつけて、雄一郎は身をくねらせて悶えた。
 
 
「ッぐ、ぅうゥ」
 
 
 異物に身体の内側を弄られるのが気色悪い。逃れるように腰を揺らすと、テメレアは片手で雄一郎の腰骨を鷲掴んで固定してきた。そのまま、尻の中に入った指を前後に動かされる。その度に尻の狭間でシャグリラの粘液がぷちゅぷちゅと下品な水音を立てた。
 
 何度かシャグリラが注がれ、指も二本に増えた。僅かにほぐれた腹の内側に何か柔らかいものが押し込まれる感触に、ぞわりと背筋が震える。
 
 
「なっ、にを入れてる…ッ」
 
 
 思わず上擦った声が唇から溢れた。顔を上げて肩越しに振り返ると、テメレアが桃色の果実の欠片を掲げた。
 
 
「シャグリラの実です。奥に入れば入るほど、仮子宮の早期定着に繋がります」
 
 
 事も無げに告げられる言葉に、眩暈を覚えた。
 
 
「これから毎日そんなもんを腹に入れると思うと、死にたくなってくるな…」
「直ぐに慣れます」
 
 
 平然としたテメレアの声音に、他人事だと思いやがってと微かな苛立ちが込み上げてくる。だが、その苛立ちも腹の奥へと果肉を押し込まれる感触に霧散していく。
 
 
「ぁ、ゥぐッ」
 
 
 中へと果肉が詰められる度に、色っぽさなど無縁の獣ような唸り声が漏れる。直腸の圧力で果肉は潰され、じゅわりと溢れ出た果汁が後孔から太股へと伝っていく。部屋中に広がる甘ったるい匂いに脳味噌の芯がぼやけていくのを感じた。
 
 
「シャグリラの実には、軽い麻酔の効能もあるんです。鎮痛や高揚感、多少の幻覚効果も。ですが、中毒性はないのでご安心を。もう異物感も感じなくなってきましたか? 今、指が三本入ってるんですよ」
 
 
 テメレアの声が受話器越しの声のように遠く聞こえる。大きく広げられた後孔だけでなく、身体中の感覚が遠い。まるで、ぬいぐるみの身体に入っているかのようだ。
 
 いつの間にか口が閉じられなくなって、涎が唇の端から零れていた。まるで幼児のように涎を垂らす口元に、指先が触れる感触。
 
 
「あんた、大丈夫なのか…」
 
 
 大丈夫じゃない。だが、大丈夫だ。大丈夫じゃないこと方が多いけど、耐えられないほどではない。俺はもっとずっと耐えられないことを知っている。
 
 頭の中で返事をしながら、顔を上げる。視線の先に、ノアの顔があった。心配そうな、不安げな、幼い眼差し。雄一郎はその瞳をどこかで見たことがある。そう思った瞬間、唇が勝手に動いていた。
 
 
「…まな…」
 
 
 誰かの名前を呼ぶ。だが、それが誰の名前なのか一瞬自分でも思い出せなかった。頭の中がもやがかっていて、記憶が上手に引き出せない。
 
 

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Published in 37歳のオッサンが戦場で女神と呼ばれる世界

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