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吾妻の悲喜 *R-18

 
 かなしいかなしいうれしい。
 
 上手く言葉に出来なくて、舌が縺れて、咽喉で絡まってもどかしい。
 
 悲痛な叫びを漏らして意識を失った子供の背骨を抱え直しながら、ゆっくりと腰を動かす。食い千切られそうなほど狭く、溶けそうなほど熱い子供の粘膜が自身の性器に絡まってくるのを感じながら、震える息をゆっくりと吐き出した。涙に濡れそぼった子供の頬に顔を摺り寄せて、その柔らかい頬肉に鼻先を沈めて呟く。
 
 
「健一、愛してる」
 
 
 奥に挿れたまま円を描く様に腰を動かせば、くちゃりと血の粘つく音が響いて、同時に反射するように子供の両脚が小さく跳ねた。内股の筋肉がぴくぴくと痙攣して、柔らかい粘膜がねっとりと性器を絞り上げる。その苦痛と紙一重の快楽を息をつめて堪える。視線を落せば、萎れた小さな性器と血に塗れた後孔に突き入れられた自身の性器が見えた。その鮮やかな赤色に飽きることなく欲情する。下半身に血が巡って、海綿体が膨張するのが分った。途端、「うぅ」とも「グぅ」とも付かぬ苦しげな呻き声が子供の咽喉から溢れた。
 
 子供の瞼がいたいけに震えて、睫毛から水滴がぽたぽたと滴る。仄かにしょっぱい水滴を舌先で吸い取って、子供の痛みや絶望を思う。突然連れ去られ、家族を殺され、男に犯されるという最低なストーリーを。これからの地獄のような日々を。
 
 
「愛してるよ」
 
 
 その言葉が免罪符になるなんて欠片も思ってはいない。許して欲しいとは思わない。愛してるというこの引き裂かれそうな気持ちが理解して貰えるとも思わない。きっと僕の思いは、この子供には何一つとして伝わらない。
 
 
「愛してる」
 
 
 届かない。理解されない。伝わらない。解り切っているのに、どうしても言わずにはいられない。何て虚しい、不毛な行為だろう。受け取ってもらえない愛情は、一体何処に行くのだろう。地面に落ちたクズのように、塵取りで掬い取られてゴミ箱へ棄てられるのだろうか。それとも、拾われる事もなくグチャグチャに踏み潰されて消えていってしまうのだろうか。どうせ踏み潰されるなら、この子に踏み潰して欲しい。足蹴にして、踏み躙って、僕の心がもう二度と再生出来なくなるぐらい。感情がなくなって、悲しいも愛してるも分からなくなってしまうぐらい、僕の心を壊してくれればいい。
 
 子供が小さく呻き声を上げて、無意識にだろう指先がシーツを掻き毟る。その短い指を絡め取って、一本一本咥内でしゃぶっていく。少し泥の味がする爪の間まで舌先をねじ込ませて、指の付け根を奥歯で噛んで、その度に戦慄く後孔に身体が昂る。少し強めに奥を突き上げれば、子供が引き攣った悲鳴を上げて咽喉を逸らした。
 
 
「ヒッ、ぎ」
 
 
 初めての挿入は、子供にとって苦痛でしかないだろう。だが、その苦痛の表情ですら愛おしい。でも、快楽を感じて欲しいという相反する思いもある。眉間に深く刻まれた皺に軽く唇を落として、そのまま中を掻き乱すように小刻みに律動を続ける。くちゃくちゃと響く粘着質な水音が鼓膜を麻痺させそうだった。
 
 
「ヴ、ぅ、あッ、いぁ、ァ」
 
 
 明瞭さを持たない呻き声が意識を失った子供の咽喉から、壊れたピアノの旋律のように溢れ出す。痛みが酷いのだろう、固く閉じられた瞼からぽろぽろと止め処もなく涙が零れていた。その涙に憐れみを覚える。
 
 
「可哀想に」
 
 
 自分で発したとは思えない程、空虚な響きを持った言葉だった。知らず唇に乾いた嗤いが滲んでいた。
 
 
『可哀想に』
 
 
 僕も何度この言葉を言われ続けてきただろう。赤ん坊の頃から虐げられた。花瓶で頭を打たれ、高い壺を割りやがってこの野良犬が、と理不尽に罵られて、顔が原型を留めなくなるまで殴られ、庭の木に裸で括り付けられ冷水を浴びせかけられて、寒さと痛みと眩暈の中でこのまま死にたいと願った。いっそ殺して下さいと喚き散らした夜もあった。そんな僕を見て、誰もが可哀想と言った。親戚達も、組員も、襖の影から此方を窺っていた母も。皆が僕を同情の眼差しで見詰め、そして誰一人として僕を助けてはくれなかった。僕はひたすら憐れまれた。憐れまれるだけだった。母親から『可哀想だけど、お願いだから我慢して、どうかお願いだから、我慢、ね、ね?』と泣いて懇願された時、僕は初めて自覚した。
 
 
「可哀想」
 
 
 僕は、可哀想だった。昔の、子供だった頃の僕は。誰も傷付けず、ただ被害者でいればよかった僕は。だけど、今の僕はもう可哀想じゃない。誰かを『可哀想』な立場に追い遣った僕は何処までも加害者でしかない。
 
 そうして、僕の最大の被害者はこの子だ。健一、僕に愛された可哀想な子供。野球が好きで、テレビもゲームも好きで、算数が少し苦手で、強がりで少し我侭な、平凡なただの少年。顔立ちだって、目を惹くほど綺麗なわけでも可愛いわけでもない。
 
 それなのに、気味が悪いぐらい僕はこの子を愛している。狂ってると表現してもいいぐらいだ。この子のことを考えるだけで、全身の産毛が逆立って、両手を振り回して無茶苦茶に踊り出したくなる。健一と会ってから、この子を抱くことしか考えていなかった。頭の中で何度も犯して、その耳朶を噛みながら愛してると囁いた。想像の健一は、それでも僕を愛してるとは言ってくれなかった。怯えた眼差しをして、時折憎悪に燃え滾った眼球で僕を貫く。きっと現実もそうなる。この子は僕を愛さない。憎むだけだ。
 
 
「愛してる」
 
 
 また意味のない言葉を繰り返している。もう殆ど寝言か譫言のようだ。
 
 
「愛してる」
「愛してる」
「愛してる」
「愛してる」
 
 
 幾度並べ立てたって、繰り返したって、何も生み出さない。もう、その言葉は意味じゃなくて音だ。愛してるという響きをした音。その音を聞くと、僕の心は痛む。ギリギリと心臓を細い紐で引き絞られているように痛む。
 
 子供の性器を緩く撫ぜる。射精すら知らなかった幼いモノに快楽を覚えさせる。少し固く尖った性器を、円状にした人差し指と親指で上下にすいて、子供の頬が微かに火照ったのを見る。
 
 
「ふ、ぁ」
 
 
 吐息と共に零れる声に、唐突に無我夢中で叫び出したくなる。
 
 健一、言って。嘘でもいいから。嘘でいいから。冗談でも、僕を傷付けるためでも構わないから、一言でも構わない、嗤いながら蔑みながら、手前気色悪いんだよって罵りながらでもいい、その言葉を言ってくれるなら、僕は何だってしても構わない。死んだっていいんだ。その言葉に続けて、死ねって言えば、僕は死ぬよ。舌を噛み切っても、首を吊ってでも、もっと酷い方法でも、どうやってでも死ねる。その言葉を聞ければ、僕は笑って死ぬことが出来る。だから、言って、お願いだから、お願い、お願い、お願い、どうか、
 
 
「健一、すき」
 
 
 涙が零れそうになった。あんまりにも惨めだった。愛されなくても構わない。そんなのは嘘っぱちだ。僕は愛されたい。誰からも愛されず憐れまれるだけだった僕の人生、救ってくれるのは健一しかいないと、六年前のあの日に思った。思い込み、盲目的に信じている。きっと死ぬまで。例え思い込みでも勘違いでも、僕は健一がすき。だいすき。
 
 分泌液を出し始めた幼い性器を愛おしむ。先端の穴に爪を軽く立てれば、子供の足の爪先がピンと伸びて、後孔がぎゅうと締まった。は、と小さく息を零して、そのまま抉るように奥を突き上げる。
 
 
「ひ、アぁ、あ、、や、ヤぁァ…」
 
 
 無意識に拒絶している子供の声に、胸が潰れた。悲しみを押し隠すように、子供の肩口にそっと額を押し当てる。
 
 熱い粘膜がラストスパートをかけるように締め付けてくる。細い腰を掴んでやや乱暴に揺さ振れば、子供の両手が藻掻く様に動いて、そのまま僕の首にしがみ付いた。その瞬間、溢れてきたのは紛れもない歓喜だ。全身がぶるぶると震えるような喜びの嵐だった。
 
 健一にしてみれば、痛みから逃れるための行動でしかなかったのだろう。だけど、僕はそのとき抱き締められたと思った。健一が僕を受け容れてくれたのだと、僅かな瞬間だけでも空虚な想像に浸れた。
 
 
「ヤ、あ、ぁッ」
「健一」
 
 
 律動の度に、腹に擦れる子供の性器は固い。それが僕を悦ばせる。子供の嬌声に混じって、自分の荒い息遣いが聞こえる。限界が近い。子供の中から響いて来る水音も、くちゃくちゃという音からぐちゃぐちゃという切迫した音に変わっている。洩れた先走りが血と混じり合って糸を引かせる。先端近くまで抜いて、そのまま奥まで叩き込む。その衝撃に、子供の足が引っ切りなしに跳ねて、滅茶苦茶な動きをしている。子供の爪が背中に食い込んで掻き毟る。皮が裂かれ、肉が磨り潰される感触。堪らない。もっと傷付けてくれればいいのに。ナイフで背中を切り開いて、生きたまま脊髄を引き摺り出してくれればいい。そうすれば、僕は健一の中で幸福なまま死ねる。温かい粘膜に包まれたまま、断末魔を上げて、何て幸福な。
 
 
「ッ、殺して…、けん、っち、殺して…!」
 
 
 引き絞られた声を発して、子供の性器を一気に擦り上げた。途端、子供が引き攣った悲鳴を上げて、全身を反り返らせ、腹の上に白濁した液を撒き散らす。その瞬間、性器を引き千切りそうな程の強さで後孔が締められ、下半身に熱が一気に爆発した。そうして、眩暈がするような熱を子供の体内へと思う存分吐き出す。下腹を細かく痙攣させながら、全て出し切るように、蠢く内壁をそれでも突き上げる。小さな後孔から、飲み込みきれなかった白濁がごぷっと音を立てて溢れ出していた。
 
 
「ヒ、ぃィ」
 
 
 掠れた悲鳴を上げて、ビクビクと震える子供が僕の肩にしがみ付く。快感と紙一重な不快感を堪えるように下唇を噛み締めている。全て吐き出し終わって余韻のように粘膜を掻き回したまま、噛み締められた下唇を舌先で撫ぜれば、唇が緩く解けた。そのまま、ゆっくりと唇を合わせる。濡れた唇を柔らかく啄ばんで、軽く額を擦り合わせる。途端、安堵したように身体から力を抜く子供が可愛くって仕方ない。
 
 
「健一、うれしい」
 
 
 君を抱けて嬉しい。君が今傍にいてくれて嬉しい。君がこの世にいてくれる、それだけで僕は神様に平伏して『嗚呼、神様感謝します! 全知全能の神様、貴方ほど素晴らしいお方はいらっしゃいません! ありがとう! ありがとう! ありがとう!』と叫びたいぐらい嬉しいんだ。だけど、
 
 
「健一、かなしい」
 
 
 どうしてだか悲しい。悲しくて堪らない。胸が張り裂けそうで、苦しくて痛くて仕方ない。このままでは悲しくて死んでしまいそうな程なんだ。健一、健一、とても苦しいんだ。嬉しいのに、悲しい。悲しいのに、嬉しい。笑えばいいのか、それとも泣けばいいのか、わからないんだ。うれしい、かなしい、けんいち、けんいち、
 
 
「―――たすけて」
 
 

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Published in catch1

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