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『Catch 第一部』 番外編サンプル

 
 ぱっと目を開くと、目の前に健一の顔があった。
 
 僕が捕らえて、魂を叩き潰した十二歳の健一の顔。憔悴と苦痛を滲ませた青白い寝顔は、お世辞にも安らかとは言えない。つい数時間前まで散々犯されていたのだから当たり前だ。
 冷汗で額に貼り付いた前髪へと、そっと指先を伸ばす。前髪を緩く掻き上げながら、ぼんやりとした声で独りごちる。
 
 
「髪、伸びたな…」
 
 
 攫った頃は、いかにも野球少年といった雰囲気の短髪だった。だけど、あれから数ヶ月経って、健一の髪の毛も伸びてきた。
 
 この数ヶ月の間に色々なことが起こった。起こった、というよりも、起こしたという方が正しいのかもしれない。
 
 父を殺し、真昼を殺し、謀略の果てに組長の座までのし上がった。疎まれ者の三男が大した出世だ、と思うと、口元に薄い笑みが滲んだ。あぁ、これが嘲笑と言われるのか、と夢の中の健一の言葉をふと思い出した。
 
 血の気が失せた健一の頬を撫でる。柔らかいのに、皮膚の奥は冷たい。まだ幼さを残した柔らかい産毛が掌にそっと触れる。
 
 手の甲でゆっくりと撫でていると、皮膚の底からじんわりと体温が戻ってきた。その事に、どうしてだか無性にほっとする。健一が生きていることだけが唯一の僕の救いだった。
 
 頬に触れる感触で目が覚めたのか、健一の睫毛が小さく震える。ふるふると二三度いたいけに震えた後、ゆっくりと目蓋が開かれた。健一は気怠そうに目蓋を持ち上げると、僕の顔を眺めて鼻梁に薄く皺を寄せた。
 
 
「…さわるな」
 
 
 その拒絶的な声に、これは夢じゃないと実感する。まるで汚物を見るような健一の眼差しに、僕の心臓はじくじくと痛んだ。
 
 
「健一、おはよう」
「触るな。離れろ」
 
 
 取り繕う暇もなく跳ねのけられる。それを無視して、僕は健一へと身体を擦り寄せた。剥き出しの足を絡めて、細い腰へと手を回す。途端健一の身体が鈍く強張るのを感じた。その隠し切れない怯えが僕を堪らなくさせる。
 
 腰へと回していた掌をそっと小さな臀部へと下ろしていく。尻の狭間へと指先を潜り込ませると、窄まりはまだ熱く潤んでいた。昨夜、抜かずに二度も中に出してしまったから軽く炎症を起こしているのだろう。
 
 指先を窄まりへと挿し込もうとすると、目の前から獣のような唸り声が聞こえてきた。
 
 
「きっ、しょく悪ィなテメぇ…」
 
 
 その声と同時に太股を蹴り飛ばされる。胸を強く押し退けられて、健一の温かい身体が僕から離れていった。
 
 健一が気怠げな様子でベッドから起き上がり、全裸のまま風呂場へと歩いていく。
 
 その手首足首には縛られた鬱血痕が赤黒く残っている。だが、足取りはふらついてはいない。足腰がしんどいだろうに、僕の前だから虚勢を張っているのだ。他人に弱さを見せられない彼のプライドの高さ、その愚かさが僕にはとても愛しい。
 
 だけど、優しい目で見られていたのもそこまでだった。
 
 歩いていく健一の内股を、白濁した液体がゆっくりと伝い落ちていく。ねっとりとした粘液が彼の細い太股を線のように流れていくのを見た瞬間、頭の奥で衝動が破裂するのを感じた。
 
 シーツを跳ね退けて、洗面所へと消えた健一を追い掛ける。ドアを大きく開くと、洗面台へとえずきかけていた健一が驚いたように僕を振り返った。
 
 素早く手を伸ばして、背後から健一の口を塞ぐと、途端細いうなじにぶわっと鳥肌が浮かぶのが見えた。
 
 
「ヴ、っ、…ヴぅーッ!」
 
 
 圧し掛かるようにして洗面台へと身体を押さえつけると、健一の両足が藻掻くように暴れる。そのいたいけな抵抗を嘲笑うように、もう片方の手で尻肉の狭間を押し広げる。そうして、衝動のまま、濡れた窄まりへと親指を捻り込んだ。
 
 
「ぐヴぅぅウヴゥッ!」
 
 
 まるで手負い獣のように健一が咽喉を震わせて、頭を左右に打ち振る。細い指先が悪足掻きするように、陶器の洗面台をカリカリと掻いているのが何とも愛らしかった。まるで聞き分けのない子猫のようだ。
 
 
「大丈夫、昨日中に出したのが残ってるから…そんなに痛くないよ」
 
 
 宥めるように囁きながら、親指に沿わせるように熱く屹立した先端を窄まりへとぐちゃりと潜り込ませる。瞬間、健一の背骨が雷にでも打たれたかのように大きく跳ねた。
 
 狭い肉筒を這うように奥まで陰茎を呑み込ませて行く。中に進んでいくごとに裏筋にキツく吸い付いてくる粘膜に堪らなくなる。
 
 健一は死んでも認めないだろうが、彼の身体は『オトコ』と酷く相性が良い。そこら女よりも、よっぽど巧みな内部を持っている。
 
 掌で塞いだ健一の唇、その下で歯がカチカチと音を立てているのが聞こえた。粘膜が擦れる粘着質な音と、乾いた歯の音が洗面所に密やかに響く。
 
 腰が薄い尻肉に触れる感触で、根本まで埋まった事を把握する。視線を落とすと、小さな尻に似つかわしくない暴力的なサイズの雄が奥までずっぽりと嵌まっているのが見えた。その光景に、僕はうっとりとする。
 
 だが、僕にとっての至福の時間は、健一にとっては地獄の時間だ。嫌悪と屈辱に打ち震える背を眺めながら、僕と健一との間に広がる途方もない溝について考える。無理に身体を繋げる程に、僕らの溝は深くなっていく。僕は、その溝を埋める方法を知らない。彼の心に触れる術が解らない。だから、せめて身体だけでも奪うしかない。
 
 
「ゆっくり、奥のほう擦るからね」
 
 
 彼の怯えを和らげたくて囁いたのに、指先に感じる震えは激しくなるばかりだ。
 
 根本まで埋めたまま、奥の方を掻き回すようにゆっくりと腰を動かす。途端、唇を塞いだ掌に大きく息が吹き掛かった。
 
 
「ふぅ…ぅヴ…っ」
 
 
 その吐息が痛みによるものか快感によるものか僕には判別出来ない。できれば後者であって欲しいと願う。
 
 濡れた肉壁の奥をぐちゅぐちゅと揺らすようにして掻き乱すと、健一は洗面台の縁を両手で掴んで唸り声を漏らした。力を込めすぎた指先の関節が痛々しいほどに白く色を失くしている。
 
 

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Published in catch1

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