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14 強い泣き虫 *R-18

 
 身体の下から、唸り声にも似たか細い音が聞こえる。
 
 油断すると直ぐに閉じられそうになる両足を両手で強引に割り広げたまま、剥き出しの下肢に顔を埋める。勃ち上がった陰茎の先端をぺちゃぺちゃと音を立てて舐めると、しゃっくりのような悲鳴が聞こえてきた。
 
 
「ゆ…ユーティ…そこ、ばかりっ…」
 
 
 草原に敷かれたユーティの上着の上に横たわって、カヤが身をくねらせる。下肢は既にすべての衣服を取り払われて、乱された上着の隙間からは赤い鬱血痕が幾つも覗いていた。ユーティの所有痕だ。
 
 
「気持ち、よくないか…?」
 
 
 問い掛けてから、先端の膨らみをぱくりと咥内に咥える。頬の内側に先端を擦り付けるようにしてしゃぶると、掴んだカヤの内股がビクビクと戦慄くのを感じた。その反応に気を良くして、ずるずると根本まで呑み込んでいく。浮き上がった裏筋に舌の表面を押し当てながら頭を上下に動かすと、じゅぷじゅぷと卑猥な水音が上がった。唇の隙間から先走りと唾液が混ざり合った泡が溢れ出す。
 
 
「ッ、…んん…!」
 
 
 カヤが両手で口元を覆ったまま、いやいやと拒むように首を左右に振る。咥内でカヤの陰茎が脈打ってるのが判る。それが堪らない。ユーティの唇一つで翻弄されているカヤが可愛くて仕方がなかった。
 
 
「も……でる、から…っ!」
 
 
 押し退けようとカヤがユーティの後頭部を片手で掴む。逃れようと悶える腰を鷲掴んで、強引に口淫を続けた。
 
 
「ャ…っ! だめ…ダメっ、だ…!」
 
 
 恐慌したように十本の指先に髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱される。根本までぐっと咽喉の奥に呑み込んだ瞬間、咥内でビクビクと陰茎が激しく痙攣するのを感じた。
 
 
「アッ…! あァ…っ!」
 
 
 濡れたカヤの嬌声に併せて、苦く、熱い液体が咽喉に叩き付けられる。カヤの下腹や内股が狂おしく震えている。上下に波打っていた下腹が収まった頃に、ユーティは唇を窄めたまま陰茎を咥内から引き抜いた。その刺激にすらカヤの腰がビクッと大きく跳ねる。
 
 咥内に溜まった精液を、ゆっくりと掌の上へと吐き出す。唾液と混ざった精液は泡立てた卵白のようにも見えた。カヤは、半ば放心気味で荒い息をついている。その双丘に濡れた指先を滑らせると、カヤが驚いたように身を竦めた。
 
 
「ユ…、ティ…ッ」
「カヤ、嫌か?」
 
 
 戸惑うように揺れるカヤの瞳を見つめる。言葉を詰まらせるカヤを見て、ユーティは言葉を続けた。
 
 
「君が嫌なら絶対にしない。それか、もし君にその気があるなら、俺が女役をやっても構わない」
「…お前はそれでいいのか?」
 
 
 窺うようなカヤの声に、ユーティは眉尻をくにゃりと下げた。
 
 
「…君に、嫌われる方がイヤだ」
 
 
 子供っぽいユーティの言葉に、カヤが目をパチリと大きく瞬かせる。その直後、その頬が柔らかく緩んだ。強張っていたカヤの全身から緩やかに力が抜けていくのが伝わってくる。
 
 カヤは両手を伸ばすと、ユーティの頬を左右から挟んで、そっと額を押し当てて笑った。
 
 
「どうして笑うんだ?」
「ふ、ふふ、お前が年下だったのを思い出した」
「それでどうして笑うんだよ」
 
 
 拗ねたようなユーティの口調に、カヤが更に笑い声を漏らす。
 
 
「なんていうかな…今、すごく…お前が可愛くて堪らない」
 
 
 そう囁くと、カヤはユーティに軽く口付けた。触れる程度の口付けだったが、その一瞬の触れ合いには温かい感情が満ち溢れていた。
 
 目を丸くするユーティを見上げて、カヤが目を細めて微笑む。
 
 
「お前が望むことを何でもしてやりたい。お前が望むことなら何でもして欲しい」
 
 
 まるで子供にするように、カヤが頬を擦り寄せてくる。そうして、カヤはユーティの耳元に囁いた。
 
 
「俺の身体も魂も、永遠にお前のものだ」
 
 
 心臓が止まるかと思った。大きく見開いた目で見下ろすと、強い意志を称えた琥珀色の瞳が見えた。カヤは口元に艶やかな笑みを浮かべている。
 
 
「本当か?」
「誓いを破ったら、俺を殺してもいい」
「君を殺すわけないだろう」
 
 
 呻くように返すと、カヤが小さく笑い声を上げた。砂糖菓子が咽喉を転がるような、甘く無邪気な笑い声。
 
 そうして、カヤはユーティの首に両腕を回すと、淡い溜息のような声を漏らした。
 
 
「全部、お前のものにしてくれ…」
 
 
 その声を聞いた瞬間、頭の奥が真っ白になるのを感じた。指先まで体温が流れて、全身が愛情で満ちていく。
 
 気が付いたら、カヤの身体をうつ伏せて、その後孔に指先を潜り込ませていた。白濁をまとわせた中指をずるずると奥まで進めていくと、カヤの綺麗な肩甲骨が跳ねる。
 
 
「痛くないか?」
 
 
 背後から覆い被さるようにして耳元に唇を寄せると、カヤがこくこくと子供のように頷いた。
 
 
「へいき、だから…」
 
 
 その声に促されるようにして、中指を前後にゆっくりと動かす。その度にカヤは、ふ、ふ、と短い呼吸を繰り返した。
 
 前後の動きが滑らかになってきた頃に、二本目の指をゆっくりと中へと差し込んだ。
 
 
「んっ、ん、ァ…」
 
 
 二本の指でバラバラに粘膜を擦るように動かすと、鼻がかったカヤの声が聞こえた。掌に残った白濁を中に擦り込んでいくと、少しずつ肉壁が柔らかく潤ってくる。
 
 その感触にすら高ぶった。一度も触れていないにも関わらず、下衣の前がキツく張り詰めている。堪らず、カヤの裏腿に硬くなった下肢を押し付けると、眼下のうなじが震えた。
 
 
「ユー、ティ、…もう、挿れていい…から…」
「駄目だ。二本じゃ足りない」
「だって、おまえ…こんな…」
 
 
 言葉を遮るように三本目の指を捻り込んだ。今度は中々奥まで入らず、半ば強引に根本まで沈めていく。
 
 
「あ、あ…っ!」
 
 
 カヤの掠れた声。視線を落とすと、三本の指を咥え込んだ後孔が見えた。キチキチに広がった縁が暗闇の中でも赤く色づいているのが判る。
 
 ゆっくりと三本の指を動かすと、カヤの背骨がくねるように波打つ。背に浮かび上がった汗を舌で舐め取ると、指を咥えた後孔が驚いたようにキュウッと窄まるのを感じた。
 
 
「っ、…ふぁ、ア…」
 
 
 三本の指に感じる締め付けが僅かに緩んできたのを感じて、ゆっくりと指を引き抜く。尻肉を左右に割り広げると、微かに口を開いた後孔が見えた。その光景に、また血が昇っていく。
 
 下衣から完全に勃ち上がった性器を取り出して、膨らんだ先端をぐっと押し付ける。途端、怯えたように後孔がキュッと窄まった。先端に吸い付いてくるような感触に、吐き出す息が震える。
 
 
「…すまない、最初は…余裕がない…」
 
 
 宣言するように呟くと、カヤは敷かれた上着へと左頬を押し当てて、濡れた視線をユーティへと向けた。
 
 
「いい、から…、もッ…はやく…」
 
 
 怯えながらも強請る声に、理性が音を立てて千切れる。グッと腰に力を込めると、そのまま綻んだ穴へと先端を沈めた。
 
 
「ッぐ……ンンぅ…!」
 
 
 カヤが悲鳴を殺そうと、自身の手の甲に噛み付く。その背骨がまるで痙攣でも起こしたかのように、ぶるぶると震えているのが見えた。
 
 
「カヤ、力を抜いて…」
 
 
 キツく締め付けてくる後孔に、僅か陰茎にも痛みが走る。宥めるように戦慄く背や脇腹を撫でていると、後孔の締め付けがほんの少しだけ緩んだ。その隙に、ずぶっと一番太い部分を埋め込む。
 
 
「んグぅ!」
 
 
 太い部分が潜り込めば、後はずぶずぶと根本まで肉筒に沈んでいった。熱く絡み付いてくる粘膜に、頭の奥がじんと痺れる。
 
 
「あ…あァァ…」
 
 
 無意識に助けを求めるように、カヤの指先が藻掻く。その手を真上から縫い止めて、殆ど身体を密着させるようにして奥まで犯した。下生えと尻が触れ合う。
 
 
「全部、入った」
 
 
 独りごちるように囁く。カヤは俯いたまま、荒く短い呼吸を繰り返している。
 
 いつの間にか酷く汗をかいていたのか、ピッタリと重なった胸と背がぬるついていた。ぬるつく身体を合わせたまま、身体全体を揺さぶるようにして奥の方を小刻みに突き上げる。
 
 
「ぁ…ん、んっ」
 
 
 馴染んできた頃に、少しずつ突き上げの幅を大きくしていく。中程まで引き抜いて、また奥まで差し込む。奥まで先端が潜り込む度に、きゅうっと肉筒に陰茎が食い締められる感覚が堪らなかった。
 
 
「カヤ…熱くて気持ちいい…」
 
 
 耳元に掠れた声で囁くと、カヤの耳が更に朱色に染まるのが見えた。
 
 
「……そ、ういっ…こと、…言ぅ、なッ…」
 
 
 律動に声を途切らせながらも、カヤが非難するように言葉を漏らす。だが、そんな声も今は甘い嬌声にしか聞こえなかった。頭の芯がぼやけて、快楽のことしか考えられなくなる。
 
 
「…ごめん、一度出したい…」
 
 
 そう口に出した瞬間、律動の速度を上げた。カヤの腰を両手で抱え上げて、半ば下半身を浮かせるようにして、ぐっと奥まで突き上げる。途端、カヤの咽喉からしゃっくりじみた嬌声が溢れた。
 
 
「ヒッ、ぁあッ」
 
 
 中に塗り付けた精液のせいか、それとも滲み出た先走りのせいか、カヤの粘膜は既にぐずぐずに濡れそぼっていた。大きく前後に動くのに合わせて、じゅぷじゅぷとあられもない水音が上がる。
 
 
「ぅヴ…うー…っ」
 
 
 カヤが音を恥ずかしがるように、両手で耳を塞ぐ。まるで愚図る子供のようで、その仕草が可愛くて堪らない。塞がれた耳元に唇を寄せて、囁く。
 
 
「カヤ…かわいい…」
 
 
 その声が聞こえたのか、途端後孔の締め付けがキツくなった。太く浮かび上がった裏筋に、熱い粘膜が絡み付いてくる感触に目の奥がチカチカと点滅する。締め付けを振りほどくように荒っぽく二三度中を突き上げた。
 
 そうして、一番奥まで先端が潜り込んだ瞬間、熱が弾けるのを感じた。
 
 
「ふ…」
「ぅあ…アぁ、…やッ…!」
 
 
 息を詰めて、中に熱を吐き出した。一番深いところに出されているのを感じたのか、カヤが悶えるように腰を揺らす。その腰をぐっと引き寄せて、最後の一滴まで強制的に呑み込ませる。戦慄くカヤの指先が藁にでも縋るように短い草をキツく握り締めているのが見えた。
 
 
「…ぁ、あ…」
 
 
 射精が終わった後も、粘膜に精液を馴染ませるように腰を前後に揺らす。ゆっくりと陰茎を引き抜くと、カヤの後孔から白濁がとろとろと溢れ出してきた。その光景に、惨い独占欲が体内から沸き上がってくる。
 
 
「カヤ、こっちを向いて」
 
 
 ぐったりと倒れているカヤの腕を引っ張って、仰向けに転がす。両足の間に圧し掛かると、一瞬カヤが怯えたように瞳を揺らした。
 
 
「…ユーティ、まだ…するのか…?」
「したい。……駄目か?」
 
 
 瞳を覗き込んで、甘えるように訊ねる。そうすれば、カヤが嫌だと言えない事を知っていた。カヤが言葉に詰まった後、唇を僅かに震わせて答える。
 
 
「…お前が、したいなら」
 
 
 そう答えて、カヤは自分で両足を恐る恐る開いた。従順でいたいけなカヤの姿に、すぐさま下腹部に熱が点る。
 
 濡れた後孔に半勃ちした陰茎を押し付けて、奥へとずるずると呑み込ませて行く。先ほど中に出したおかげか、最初の挿入の時よりも抵抗はなく、キツさも和らいでいる。
 
 
「ぅ、ヴゥ…」
「カヤ、痛いか?」
「…っ、たくない…けど…、腹がパンパン、で、…苦しっ…」
 
 
 浅い呼吸の合間に、カヤがたどたどしい声を上げる。眼下の下腹部へと掌を這わせると、腹筋がビクンと跳ねた。その衝撃で、後孔がキツく締められる。息を小さく漏らして、しゃぶり付くような締め付けに耐える。
 
 
「…ごめん…もう、少し、大きくするから…」
 
 
 謝りながら、両手をカヤの身体の両脇に付く。そのまま、ぐんっと腰を押し付けると、カヤの咽喉から掠れた悲鳴が零れた。
 
 
「あ、ぁッ!」
 
 
 半勃ちだった陰茎を前後に動かして、完全に勃起させて行く。少しずつ膨張していく体内の異物を感じたのか、カヤがユーティの腕を掴んで、首を左右に振る。
 
 
「…もっ、でかく…す、るな…ァ…」
「ん、ごめん。…ごめんな」
 
 
 僅かに目尻に涙を滲ませるカヤを宥めるように、顔へとキスの雨を降らせる。口では謝りながらも、中を擦る動きは止めなかった。濡れそぼった肉壁を攪拌して、一番深い場所まで犯していく。
 
 気付けば、カヤの吐息に甘さが混じり始めていた。くにゃりと萎えていた陰茎が僅かに勃ち起がっているのが見える。奥から先端まで引き抜く瞬間、ユーティの腕を掴むカヤの指先にぎゅうっと力が込められる。
 
 
「…抜かれる時の方が、気持ちいい?」
 
 
 訊ねると、カヤは赤い顔を更に赤く火照らせてユーティを睨み付けた。余計なことを聞くな、という表情。
 
 わざと中を擦るようにしてゆっくり引き抜いていくと、悶えるようにカヤの腰が揺れた。そうして、ある一点を擦った瞬間、カヤの全身が殊更大きく跳ねた。もう一度確かめるように擦ると、今度は後孔がぎゅうぅっとキツく締め付けてくる。
 
 
「ここは、気持ちいいか?」
 
 
 ユーティの問い掛けに、カヤは憤死しそうな表情でそっぽを向いた。噛み締められた下唇が微かに震えている。
 
 
「…き、きくな…ぁ…」
 
 
 羞恥のあまり涙目になったカヤが愛らしい。だが、否定しないという事はそうなのだろう。
 
 律動を小刻みにして、数回そこを先端で擦ってから奥まで挿し込む。その動きを繰り返している内に、カヤの性器は硬くなっていった。密着して腹で挟むようにして陰茎を擦ると、耐えられないと言いたげにカヤの両手がユーティの背を掻き毟った。
 
 
「ゆ、ユーティ、…そこ、も…ッ、ダメだ…っ!」
 
 
 びくびくと痙攣しながらカヤの内部が陰茎を引き搾ってくる。その感触に、堪らず奥まで一気に突き上げた。途端カヤが悲鳴じみた嬌声を張り上げる。
 
 
「アぁ、あぁああぁッ!」
 
 
 もう止まらなかった。カヤの唇に噛み付いて、暴れる舌を無理矢理絡め取る。咥内を犯したまま、獣のように荒っぽい突き上げを繰り返した。繋がった部分から、聞くに耐えない卑猥な音が上がっている。
 
 
「ンッ、んん、んーっ!」
 
 
 カヤが身体を強張らせて、ビクビクと全身を痙攣させる。ユーティを咥え込んだ後孔がキツく窄まるのと同時に、カヤの精液で腹が濡れるのを感じた。
 
 精液を強請るようにきゅうきゅうと吸い付いてくる粘膜に耐え切れず、ユーティも二度目の絶頂に達した。唇を離して短く声を漏らし、カヤの体内をしたたかに濡らしていく。
 
 
「ふぁ、あ…」
 
 
 中に吐き出される感触に、カヤが力の抜けた声を上げる。すべて出し終わった頃に、カヤの体内から陰茎をゆっくりと引き抜いた。ずるずると抜け出ていく感覚に、カヤが腰を戦慄かせる。
 
 
「カヤ、大丈夫か?」
 
 
 頬を撫でて訊ねると、カヤは数度瞬いてから視線をユーティへと向けた。
 
 
「大丈夫、だ…」
「…すまない、最初から無茶をした」
「それ…終わった後に言うか…」
 
 
 今更なユーティの謝罪に、カヤが小さく声を上げて笑う。そのまま両腕を伸ばして、ユーティの頭をぎゅうっと抱き締めてくる。まるで幼子のようなカヤの仕草に、愛しさが募る。
 
 ユーティの頭を離すと、カヤは真っ直ぐユーティを見つめて囁いた。
 
 
「許してくれユーティ」
「…一体、何を許すんだ」
「お前を、離してやれなかった。俺は、お前に何も与えてやれない。きっといつかお前に辛い思いをさせる。お前のことを想うのなら、離れるのが一番良いと解っていたのに…」
 
 
 カヤの瞳に再び涙が滲んでいく。カヤはユーティの胸に額を押し付けると、懺悔に満ちた声を漏らした。
 
 
「…お前を、離したくない…」
 
 
 吐き出されたカヤの本音に、心臓が苦しいくらい締め付けられた。ユーティが思うよりもずっと、カヤはユーティのことを想ってくれていたのだと、この瞬間ようやく気付いた。
 
 後悔に打ち震えるカヤの身体を強く抱き締める。
 
 
「カヤ、許しを乞うことなんて何もない。俺は、君を愛している。君以外の妻なんて要らない。たとえ子が産まれなくても、俺は君が傍にいてくれれば幸せなんだ…」
 
 
 たとえどちらかが先に逝ってしまったとしても、子も孫もなく独りぼっちになってしまったとしても、愛する人に心から愛されたという事実だけで人生は満ち足りる。幸福な人生だったと思える。そう信じたい。
 
 
「だから…何処にもいかないでくれ」
 
 
 祈るように囁く。すると、暫くの沈黙の後、微かな啜り泣きの声が聞こえてきた。カヤがユーティの肩に顔を埋めるようにして泣いている。
 
 カヤの形の良い後頭部を撫でながら、ユーティは少しだけ笑った。
 
 
「君は、強いのに泣き虫だな」
 
 
 そう呟くと、カヤの両手がぎゅうっとユーティの両肩を握り締めた。縋り付くようなその手に答えるように、カヤの目蓋に唇を落とす。
 
 カヤが薄く目を開くと、濡れた琥珀色の瞳に月の光が映り込んで金色に輝いた。その宝石のように美しい瞳を、ユーティは見つめ続けた。
 
 

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Published in 花嫁のカヤ

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