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12 もしよければ、触る?

 
 涙が止まる頃には、温かかった握り飯は冷えてカチカチに固まっていた。握り飯を皿へとそっと戻しつつ、ゆっくりと息を吐き出す。冷静になるにつれて高校生にもなって人前で大泣きしてしまった気恥ずかしさが込み上げてきて、顔が上げられなくなった。
 
 数分の躊躇の後、意を決して俯いていた顔をあげると、思った以上の至近距離に空介の顔があった。思わず、ぎょっとして仰け反る。途端、空介は目を細めて笑った。
 
 
「ふはっ、月乃さん、目ぇ真っ赤じゃん」
 
 
 からからと声を上げて笑う声音は、酷く無邪気だった。落ち込んだ陽太を元気付けるような屈託のない笑い声に、心に溜まっていた澱が僅かに軽くなるのを感じる。ぎこちなく頬に笑みを滲ませると、応えるように空介も笑みを深めた。テーブルに置かれていたティッシュを引き抜くと、そのまま空介は母親のような仕草で陽太の顔へとティッシュを寄せてくる。
 
 
「月乃さん、鼻水出てる」
「へ…ぅえぇ!?」
 
 
 率直な指摘に顔を背けようとすると、じっとしてて、とぴしゃりと言いつけられた。くしゃくしゃに顔を歪めたまま大人しくしていると、甲斐甲斐しい手付きで鼻をティッシュで拭われる。
 
 
「はい、チーンして」
 
 
 子供に言い聞かせるような台詞に、もう反抗する力も湧いて来なかった。半ば自棄っぱちに鼻をかむと、空介が、ふふ、と小さく笑い声を漏らすのが聞こえた。そうして、顔を綺麗に拭い終わったところで、よしと空介が独り言を漏らして手を引くのが見えた。
 
 
「あの…ごめん…」
「え、何が?」
「いえ、鼻水、とか…」
 
 
 ごにょごにょと言い淀むと、空介は一瞬きょとんと首を傾げてから、ふにゃんといつも通りの緩み切った笑みを浮かべた。
 
 
「全然、そんなん気にしなくていいって。月乃さんってすげぇ真面目だなぁ」
 
 
 笑い事にするみたいな軽い口調が今は有り難かった。それでも、陽太が申し訳なさそうな顔をしていると、空介はふと何かを思い付いたように唇を陽太の耳元へとそっと寄せた。
 
 
「あのさぁ…もしよければ、触る?」
「え?」
 
 
 問われた意味が解らず、思わず目が瞬きを繰り返す。すると、焦れたように空介が唇を尖らせるのが見えた。
 
 
「だから、触る?」
「何を?」
「俺の尻」
「はぁ!?」
 
 
 突拍子もない空介の発言に、素っ頓狂な声が咽喉から溢れた。唖然と唇を半開きにさせていると、空介はくてんと子犬のような仕草で首を傾げた。
 
 
「触んないの?」
「え、ぇ、なっ、何で? どうして?」
 
 
 積もり積もった欲望から、とうとう幻聴が聞こえ始めてきたのかとすら思う。どうしてこんな棚からぼた餅的な幸運が舞い降りて来るのか。頭が現実について行かない。
 
 
「だって、月乃さん俺の尻が好きだって言ってたじゃん。三度の飯より好きって。だから、尻触ったら元気になるかなーって思って」
 
 
 本人は何気ない思いやりから提案したのかもしれないが、陽太にとっては天変地異を巻き起こしかねない程の大事件だった。口をぽかんと開いたまま微動だにしない陽太を見て、空介が少し弱ったように眉尻を下げる。
 
 
「やっぱりいい?」
「いいえ、お願いしますッ! 是非触らせて下さいッ! もみもみと揉みしだかせて下さいぃい!」
 
 
 限界を迎えた欲望が赤裸々に口から溢れ出る。身体を前のめりにして叫ぶ陽太の気迫に、空介が一瞬驚いたように背を仰け反らせるのが見えた。だが、今更落ち着けという方が無理な話だ。
 
 
「ん。じゃあ、どうぞ」
 
 
 呆気ない台詞と共に、空介が後ろを向く。正座した両踵の上に柔らかそうな尻がぷにゅんと乗っているのが視界に映って、咄嗟に涎が垂れそうになった。
 
 
 え、マジでこれ触っていいの? 思う存分、揉みまくってOKなんですか?
 
 
 頭の中で自問自答が流れつつも、両手は葛藤とは裏腹に正直に動いた。両手が空介の尻へと伸びて、その双丘をもにゅっと鷲掴む。スウェットの生地越しに指先が柔らかな肉に埋まる感触に、皮膚がぞわりと粟立つのを感じた。
 
 
「うわっ」
 
 
 思っていたよりも遠慮のない触り方に吃驚したのか、空介が短い声をあげる。その声は聞こえたけれども、両手は勝手に動き続けた。指の形に馴染むように沈み込む双丘の感触に夢中になって、もにゅもにゅと揉み込み続ける。
 
 一カ所だけでは満足出来ず、やや固めな尻外側の肉をやや強めに握ったり、尻中心を掌で押し上げるようにして揉み上げる。そうして、窄まりに近い尻内側を左右に広げるように親指の腹できつく揉むと、空介の背筋がピクンと跳ねるのが見えた。
 
 
「あ…あの、月乃さ、ん…」
 
 
 微かに震えた空介の声音が聞こえたが、返事はしなかった。陽太の視線は尻へと一心に向けられたまま離れない。
 
 
 すげぇ柔らかい…。柔らかいけど、脂肪の下にきちんと筋肉が付いてて、適度に弾力もあって…。絶対この中に突っ込んだら気持ちいい…。
 
 
 頭の奥でうっとりと囁く自分の声が聞こえる。尻の割れ目を揉む親指が悪戯に窄まりに触れると、空介が、んっ、と短く掠れた声をあげた。
 
 
「つっ、つきのさっ…」
 
 
 窄まりは布越しでも判るくらいヒク付いていた。くにゅくにゅと親指の腹で弄くると、怯えたようにきゅうぅっとキツく窄まるのが伝わってくる。
 
 
 あぁ、指でもいいから突っ込みてぇなぁ。指じゃなくて、本当はチンコ突っ込みたいんだけど。先っぽだけでもいいから…いや、やっぱり根本までブチ込みたい。熱い粘膜を散々擦り上げて、中の痼りをゴリゴリ抉って、散々可愛い男を喘がせた後に、奥に溢れるくらいザーメン吐き出してやる…。
 
 
「月乃さんっ!」
 
 
 悲鳴にも似た空介の叫びに、ハッと我に返った。気付けば、尻を揉んでいた筈の陽太の親指は、半ば空介の窄まりへと侵入しようとしていた。スウェットの生地が尻の割れ目に向かって歪な皺を作っているのが見える。
 
 空介はローテーブルに前屈みにしがみ付いて、背筋をふるふると震わせていた。まるでレイプされている少女のような戦慄きだ。小刻みに震えながらも空介が肩越しに振り返ってくる。その顔は真っ赤に染まって、目は今にも涙を零しそうなほど潤んでいた。
 
 
「も…、もう、いぃ…?」
 
 
 掠れた声に、反射的に尻を鷲掴んでいた両手をパッと離す。途端、ほっとしたように空介が息を吐くのが見えた。
 
 
「元気、なった…?」
「へ…?」
 
 
 間抜けな声が漏れる。赤らんだ空介の表情から視線が逸らせない。まるで情事後のように熱を孕んで溶けた眼差しに、自然と陽太の息も荒くなった。今すぐ空介の服を剥ぎ取って、後ろから捻り込みたい衝動を堪える。
 
 
「も…元気出た…?」
「ぇ、…あ…うん、すごく元気になった! 元気玉作れそうなくらい元気モリモリ!」
 
 
 欲望を誤摩化すようにわざとはしゃいだ声で返すと、空介が熱ぼったい表情でふにゃりと頬を緩めるのが見えた。その表情が壮絶なくらい色っぽくて、再び衝動がぶり返しそうになる。
 
 
「なら、よかったぁ…。じゃあ、…俺、部屋に帰るから…」
 
 
 健気な言葉を残して、空介がふらふらと立ち上がる。そのまま、振り返りもせず空介は部屋から出て行った。
 
 その後ろ姿をぼんやりと眺める。そうして、扉が閉まった瞬間、陽太は自身の下半身へと視線を落とした。完全に勃起した陰茎によって、セーラー服のスカートが高々とテントを張っている。
 
 
「うぁあ…やべぇ…」
 
 
 思わず素に戻った声が零れる。尻を揉んだ後、空介は肩越しにしか振り返らなかったから、きっと陽太の下半身までは見ていなかっただろうが、それでもこのヤンチャ坊主を通り越して凶悪犯な下半身の状態はまずかった。
 
 そっとスカートをめくると、ボクサーパンツにくっきりと勃起した性器の形が浮かび上がっているのが見えた。パンツを下げると、ぶるんっと跳ねるようにして陰茎が飛び出てくる。
 
 
「おい、ビックリ箱かよっ」
 
 
 一人ツッコミをしてしまうぐらいには自棄っぱちな気分だった。赤黒い血管を浮き上がらせた陰茎は先端に透明な液体を滲ませて、ビクビクと断続的に痙攣している。膨張し、凶悪に反り返ったその形に、自分自身で怯んでしまう程だ。
 
 
 きっとさっきまで此処で尻を揉みしだかれていた男は、清楚な少女の股間にこんな危ない物が隠れているなんて思いもしていなかっただろう。自分の尻が狙われているなんて気付きもせず、親切心から無防備に尻を差し出して…。
 
 
 ふ、と吐き出す息に熱が篭もる。細い指を伸ばして、膨張した陰茎へと絡めた途端、どくんと浮かんだ血管が脈打つのが伝わってきた。そのまま下唇を噛みしめて、ゆっくりと上下に陰茎を擦り上げる。先端に滲んだ先走りを幹に馴染ませるようにしてすいていると、直ぐにくちゃくちゃと咀嚼するような水音が聞こえ始めた。
 
 
 あの大きい口も、柔らかい尻も、全部コレで犯してやりたい。涙が滲んだ眼球を、悦楽でぐちゃぐちゃに蕩けさせてやりたい。あの子の全部を、俺のものにしたい。
 
 
 欲望は支配欲と紙一重だった。下半身から噴き上げる熱が全身へと回っていく。ふ、ふ、と息を殺しながら、陽太は一心不乱に性器を慰めた。セーラー服のスカートを捲り上げてマスターベーションをする自分の姿がどれだけ滑稽なのか自覚はあったが、手は止まらなかった。
 
 とろとろと透明な液体を溢れさせる先端の窪みを親指の腹で抉るように弄ると、目の奥が眩むような快感が走った。内腿がビクビクと痙攣する。鈴口を弄る親指は、ついさっきまで空介の尻の窄まりに触れていた。後孔の怯えたようなヒク付きを思い出した瞬間、頭の芯がじんと痺れて、目の前が真っ白になった。
 
 
「ッ…んゥ…!」
 
 
 額をローテーブルへとガツンと叩き付けて、漏れそうになる声を何とか殺す。尿道を通って口を開いた鈴口からびゅくびゅくと噴き出る精液をもう片方の掌で受け止める。射精に震える身体を何とか抑えて、痙攣する陰茎をそれでも擦り上げた。
 
 最後の一滴まで吐き出し終わって、ようやく止まっていた呼吸が戻って来た。テーブルに額を押し付けたまま、震える息を吐き出す。そっと下半身を見下ろすと、性器は先ほどまでの凶悪な姿が嘘のようにしゅんと垂れ下がっていた。掌には、白濁した粘膜がたっぷりと纏り付いている。ぼんやりと見下ろしていると、青臭い臭いが鼻先まで漂ってきた。
 
 
「あー…、もう、どうしろっつうんだよ…」
 
 
 ぼやく自分の声が、受話器越しのように遠く聞こえた。微かに眼球が涙で滲む。
 
 
 あぁ、もうどうしようもない。あの子に恋をしてしまった。
 
 

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Published in きみすき

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