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034 papa

 
 父さん、と、パパ。
 その言葉の意味は同じ。
 だけど、父親をパパと呼ぶ時、高臣の想いはまったく異なる。
 
 
 
 振り下ろした竹刀に鋭い衝撃を感じると同時に、「勝負あり!」と鋭く告げる声が聞こえた。途端、周囲からわぁっと歓声が上がる。竹刀を振り下ろした体勢のまま、高臣は荒く息をついた。面越しに、対戦相手の悔しそうな表情が垣間見える。対戦相手の背後に見える、決勝戦相手の高校の生徒達も皆がっくりと肩を落としていた。
 
 試合開始位置と同じ場所に戻り、蹲踞して納刀をする。それでも、まだ皮膚は緊張でピリピリと痺れていた。一礼して待機場へと戻ると、途端周囲をわっと囲まれる。
 
 
「さすが主将、すげぇっす!」
「決勝戦であの落ち着きよう、マジで半端ないです!」
「信じらんねぇ、県大会優勝ですよ!」
 
 
 口々に告げられる興奮の声を聞きながら、高臣は面を脱いだ。途端、ぽたぽたと額から滝のように汗が落ちていく。汗を拭うこともせず、高臣は労うように後輩たちの肩をぽんぽんと叩いた。
 
 
「あぁ、皆の頑張りのおかげだな」
 
 
 そう言って笑みを浮かべると、後輩たちが一斉に涙ぐんだ。視線を巡らせると、副主将の水無瀬まで微かに目を潤ませているのが見える。
 
 
「ほら、まだ終わってないぞ。並んで挨拶しよう」
 
 
 促すように背を押すと、部活仲間たちは慌てたように体育館の真ん中へと駆けていった。決勝戦の対戦校は、既に中央に整列している。
 
 その後ろを追いながら、高臣は肩越しに観覧席を振り仰いだ。観覧席の一番前に、求めていた顔が見える。ノンフレームの眼鏡を掛けた、柔らかで繊細な顔立ちをした男性だ。笑うと目が糸のように細くなって、目尻に微かに笑い皺が浮かぶ。
 
 
「父さん」
 
 
 咥内で睦言のように呟いて、片腕を大きく振り上げる。父は高臣の姿を見止めると、笑みを浮かべて片手を小さく上げた。手を左右に振りながら、父が「たかおみ」と淡く呟いてくれているのが唇の動きでわかる。
 
 その仕草に、ぐんと身体の熱が上がっていくのが解った。血液がくつくつと音を立てて沸騰していくような感覚に、知らず粘着いた唾液が湧いてくる。乾いた下唇を舌先で舐めると、高臣の高揚に気付いたように父が苦笑いを浮かべた。父が体育館の中央を指さす。指さす方向へと視線を向けた瞬間、水無瀬の声が聞こえた。
 
 
「日高!」
 
 
 高臣を呼ぶ声に、仕方なく踵を返して体育館中央へと向かって走る。それでも、皮膚の下を這い回るような興奮はなかなか消えそうになかった。
 
 
 
***
 
 
 
 閉会式を終えて会場を出たところで、ようやく父の姿が見えた。他の保護者たちに混じって、にこにこと笑みを浮かべている。
 
 
「父さん!」
 
 
 今度は大きな声で呼ぶ。駆け寄ると、父は殊更優しげな笑みを浮かべた。
 
 
「高臣、優勝おめでとう。よく頑張ったなぁ」
 
 
 柔らかな声で告げられて、大きく骨張った掌でくしゃりと頭を撫でられる。途端、胸の奥から誇らしさとも歓喜ともつかない感情が波のように込み上げてきた。
 
 
「来てくれてありがとう。仕事抜けて大丈夫だった?」
「有給が余ってたから平気だよ。上からも下からも休めってせっつかれてたから、丁度良かった」
 
 
 殆ど同じ高さにある高臣の目を覗き込んで、それに、と父は続けた。
 
 
「息子の晴れ舞台を見に行かない親なんていないだろ。格好良かったよ、高臣」
 
 
 そんな優しいことを言ってくれるから、余計に胸がきゅんきゅんとときめきそうになる。今すぐ抱きつきたい衝動を堪えていると、不意に背中にどんっと衝撃が走った。
 
 
「主将! 焼肉食いに行きましょうよ! 信じらんねぇことに、阿部ちゃんの奢りっすよ!」
 
 
 後輩の稲葉が背中にしがみついている。振り返ると、部活仲間たちが立っていた。
 
 
「信じらんねぇとか言うな。お前だけは自腹にするぞ」
 
 
 ジャージ姿の阿部が苦々しい口調で言い放つと、稲葉は「うえぇ!?」と悲鳴じみた声を上げた。
 
 阿部は数年前に赴任してきた二十代後半の教師で、剣道部の顧問をしている男だ。口は悪いが、とっつきやすい性格をしているため生徒から『阿部ちゃん』と呼ばれて慕われている。阿部がくせっ毛をぐしゃぐしゃと片手で掻き乱しながら、高臣を見遣る。
 
 
「あー、どうする日高」
「ありがとうございます。でも、俺は大丈夫です。父と一緒に帰るので、阿部先生は皆と一緒に楽しんできて下さい」
 
 
 阿部へと礼をしながら、断りの文句を述べる。稲葉が再び「えぇええっ!」と驚愕の声を漏らした。
 
 
「主将、いいんすか!? タダ飯っすよ!? 阿部ちゃんが奢ることなんてもう二度とないっすよ!?」
 
 
 歯に絹着せぬ稲葉の台詞に、阿部が稲葉の後頭部をスパンッと平手で叩く。高臣は苦笑いを浮かべながら、小さく頷きを返した。
 
 
「一緒に行けなくて悪いな。今日は疲れたから早く家に帰りたいんだ。俺の分まで、いっぱい食ってこいよ」
 
 
 そう言って、高臣よりも低い位置にある稲葉の頭をぽんと叩く。「じゃあ、お先」と皆に声を掛けて、少し離れた位置に立っていた父の元へと向かって走る。隣に並んだ瞬間、父が心配するように声を掛けてきた。
 
 
「皆と一緒に行かなくて良かったの?」
 
 
 その言葉に、高臣は拗ねたような視線を向けた。
 
 
「父さんがそんなこと言うの?」
 
 
 じわりと熱を孕み始めた眼差しを据えると、父は把握したように肩を揺らして笑った。父の掌が高臣の肩を軽く叩く。父の細い指先が汗ばんだ高臣のうなじを撫でた瞬間、皮膚にぶるりと震えが走った。
 
 
「ずっと我慢してたもんなぁ」
 
 
 そう囁く声にも、淡く淫靡さがまとわりついているように聞こえる。は、と短く息を吐き出して、父の上着の裾を隠れて握り締めた。
 
 
「はやく、うちに帰りたい」
 
 
 殆ど泣き言のような声で呟くと、父は眼鏡の奥の目を細めて、横目で高臣を見遣った。目の奥に滲む冷徹な色に、指先からすっと温度が消えていく。それなのに、体内は噴火直前のように煮え立っていた。
 
 父は時々、こんな目で高臣をみる。被験体を観察するような、淫乱と唾を吐きかけるような、それでいて視線だけで皮膚下を乱暴にまさぐるような、恐ろしいのに情欲を煽られる目だ。
 
 高臣の怯えと紙一重の高揚に気付いたのか、父が口元にうっそりと笑みを滲ませる。
 
 
「いい子だね、高臣」
 
 
 優しく告げられる言葉に、期待を感じて眼球が湿り気を帯びた。
 
 
 
***
 
 
 
 家の玄関扉を閉めた瞬間、飢えた獣のように飛びかかった。玄関の壁に父の背を押しつけて、唇へとむしゃぶりつく。歯の隙間から舌を強引に突っ込むと、父の笑い声が舌越しに伝わってきた。
 
 
「ふ、ふふ」
 
 
 がっつきすぎ、だと言わんばかりの笑い声を無視して、柔らかい咥内をめちゃくちゃに舌で荒らす。べちゃべちゃと音を立てて唾液を掻き回しながら、父の舌を絡め取る。薄くて生温かい舌の感触に、うっとりと息が漏れた。
 
 腰骨を左右から揉まれる感触に、ぞくりと背筋が震えて唇が離れた。途端、至近距離で父と目があった。
 
 
「こら、高臣。すこし落ち着きなさい」
「パパ、パパ、やだ。したい。はやく、はやく欲しい」
 
 
 窘める言葉に、駄々をこねるように甘えた声を上げる。ぐりぐりと胸に頬を押しつけると、仕方ないなぁと言わんばかりの淡い溜息が聞こえてきた。
 
 
「ここでするの?」
「うん、ここでする。ここがいい。我慢できない」
「たった一週間で我慢の限界なの?」
「だ、だって、だって…」
 
 
 呆れたような父の言葉に、思わず声が掠れる。大事な試合前ということで、一週間も禁欲していたのだ。たった一週間だけども、高臣にはとっくの前から限界だった。ふるふると肩を震わせていると、父が耳元に顔を寄せてきた。
 
 
「高臣は可愛いね」
 
 
 顔を上げるよりも早く、視界がぐるりと反転した。上がりに敷かれていた絨毯の上に押し倒されて、性急な仕草で学生服のズボンと下着を一緒くたに引き抜かれる。殆ど乱暴ともいえる強引さで、咥内に二本の指が突っ込まれた。
 
 
「ほら、舐めて」
 
 
 にっこりと笑って命じる言葉に、目が興奮に潤んだ。咥内の指に唾液を絡めるようにして舌を這わせる。じゅるじゅると音を立てて指を啜っていると、指が引き抜かれた。指はすぐさま尻の狭間へと這わされた。窄まった縁を濡れた指でくにくにと弄られて、期待に太股が震えた。
 
 
「パパ、おねがい、はやく挿れて」
 
 
 掠れた声で強請ると、父はその優しげな顔立ちに皮肉げな笑みを滲ませた。窄まりへとグッと中指が潜り込んでくる。長い指がずるずると体内を突き進んでいく異物感に、下腹がピクピクと跳ねた。
 
 
「あ、ぁあー…」
 
 
 呼吸と一緒に断続的に声が漏れ出る。根本まで中指が埋まると、中の強ばりを確かめるようにぐにぐにと鉤状に指が曲げられた。その刺激に、背筋が丸まった。
 
 
「一週間しなかっただけなのに、中がすごく狭くなってるね」
「あ、ごめんなさい、ぃ」
 
 
 涙声で謝ると、目蓋にキスが落とされた。
 
 
「違うよ、初めてした時みたいで興奮するってこと」
 
 
 囁かれる言葉に、心臓がとろけるような喜びを感じた。口元にふにゃふにゃとした笑みを浮かべて、父を見上げる。
 
 
「うれしい…。初めてしたときのこと、覚えてくれてるんだ…」
「覚えてるに決まってるだろ。吃驚したよ、目が覚めたら高臣が上に乗っかって腰振ってるんだもんなぁ」
 
 
 くすくすと潜めるような笑い声が聞こえてくる。中で指が抜き挿しされる感覚にあえやかな吐息を漏らしながら、高臣は反論するように声を上げた。
 
 
「だ、だって、俺、パパがすきで、すきで…」
「そうだね。パパも高臣が大好きだよ」
 
 
 柔らかく囁かれる言葉に、胸の奥が温かくなっていく。グッと押し込まれるようにして二本目の指が潜り込んでくる。高臣は両足を大きく左右に開いて、太股の間にある父の腰へと手を伸ばした。ズボンのベルトを外して、開いたジッパーの間へと両手を捻り込む。下着の下の硬い感触を感じた瞬間、高臣は唇に震えるような笑みを浮かべていた。
 
 
「やらしい顔」
 
 
 揶揄するように父が呟くのを聞き流しながら、下着の上から陰茎を撫でさする。悪戯するように濡れた先端部分を指先で強く押すと、父が、んっ、と呻くような声を上げた。その反応に気を良くして、片手で下着越しに陰嚢を揉み込みながら、もう片方の手で先端のカリ部分をくりくりと弄くる。
 
 
「パパ、きもちいい? おれの手、きもちいぃ?」
 
 
 誉めて貰いたくて甘えた声を上げると、父は快感を堪えるように眉根を寄せたまま高臣を見下ろしてきた。
 
 
「うん、気持ちいいよ。上手だね、高臣」
 
 
 優しい言葉に、満面の笑みが浮かんでしまう。だが、体内に入ったままの指先が痼りをグリッと押しつぶした衝撃に、ヒッとしゃっくりみたいな声があがってしまった。二本の指が痼りを挟んでグリグリと潰しては、指の腹で優しく撫でてくる壮絶な快感に、大きく開いた両足が空中を蹴り飛ばす。
 
 
「やッ、やぁ! ぱぱ、やだッ! やだぁあ、イッちゃうっ! いっちゃうからぁあっ…!」
 
 
 叫ぶ唇を、父のもう片方の掌に塞がれる。間近にある父がシーッと子供を窘めるように息を漏らした。
 
 
「あんまり叫ぶと、外に聞こえちゃうよ」
 
 
 咽喉を大きく上下させながら、こくこくと小刻みに頷く。すると、父はにっこりと笑みを浮かべてから、ゆっくりと手を退けた。再び体内の指が動き出す。二本の指が前後に動く度に、咽喉から泣き声のような掠れた嬌声が漏れた。
 
 
「…っひぅ、うヴ~…! パパ、もぉ、おねがい、おねがい、パパの挿れて…ッ!」
「まだ二本だよ。ほぐし足りないんじゃないかな?」
「いぃから…! パパの、でイきた、いっ…! 奥ッ、これっで、おく、ぐちゃぐちゃ、されたぃッ…!」
 
 
 押し殺した声を漏らして、涙目で父を見上げる。下着の中から陰茎を引っ張り出して、浮かび上がった血管をぐしぐしと両手で擦る。すると、先端からぷくりと透明な液体が滲むのが見えた。
 
 直に見る父の性器の形に、また目眩のような興奮を覚えてしまう。父の性器は、高臣の性器よりも一回り以上大きく、カリも大きく張り出していた。赤黒く反り返っていて、浮かび上がった筋も太くて針金のように硬い。これで粘膜を擦られる度に、内臓まで掘削されるような衝撃が走るのだ。見た目は優しげな男なのに、服の下にこんな凶暴な性器を持っているだなんて堪らない。
 
 咽喉を鳴らして唾液を飲み込むと、高臣の興奮を悟ったように父が笑った。
 
 
「声、出さないようにね?」
 
 
 囁かれる言葉に頷いて、高臣は口元を両手で押さえた。父が挿入しやすいように、折り曲げた両足を限界まで左右に開く。父は高臣の内股を片手で押さえて、もう片方の手で陰茎の先端をぐっと窄まりへと押しつけた。ぐにゅ、と先端が触れる感触に鳥肌が立つ。直後、体内に陰茎がぐぐっと押し込まれる衝撃に、背筋が反り返った。
 
 
「ん、んんん゛、んん゛ーー……!!」
 
 
 火照った粘膜を押し広げながら、硬い杭が奥まで飲み込まれていく。中程まで入ると、父は高臣の腰骨を掴んで、強引に奥までねじ込んできた。
 
 
「っヴぐぅ、んぅんッ……!」
 
 
 父の張り出した亀頭が粘膜をゴリゴリと擦りながら進んでいくのが分かる。身体の内側を父の陰茎の形に無理矢理押し広げられていくのを感じて、喜びで涙が溢れ出した。
 
 
「ぁ、んんッ…んっんっ、んヴぅー…」
 
 
 深くまで突き刺さっていく杭に、無意識にうっとりとした声が漏れ出る。浮かび上がった太い裏筋や血管を、粘膜が嬉しげにしゃぶっているのを感じた。
 
 ガツッと音を立てて、父の腰と引き締まった高臣の尻とがぶつかる。瞬間、目の奥でバチバチと火花が散ったような気がした。下腹部で快感が弾けて、ガクガクと腰が上下に跳ねる。
 
 
「挿れられただけでイッちゃったね」
 
 
 ぼんやりと霞んだ思考に、父の穏やかな声が聞こえてくる。か細い呼吸を漏らしながら下半身へと視線を落とすと、黒い学ランに白い液体が散っているのが見えた。父が白濁を指先で掬いながら、困ったように微笑む。
 
 
「制服汚れちゃったなぁ」
「よ、ごれてもいい…からあ…」
 
 
 譫言のように呟きながら、両手で父の腰を掴む。そのまま、ぐいと引き寄せると、根本まで入っていた陰茎の先端が更に奥をグリッと刺激するのを感じた。はぁっ、と息と声を漏らしながら、父の腰を掴んだまま自身の尻を円を描くように動かす。
 
 
「あ、あぁ、ん……パパの、きもちぃ…」
 
 
 両足をがに股に開いた浅ましい姿勢で、高臣は父の陰茎を体内で舐めしゃぶった。へそ辺りまで亀頭が侵入しているのを感じて、圧倒的な存在感に下腹がひくひくと震える。
 
 
「高臣、パパのでオナニーしてるみたいだな。そのまま自分で動いてイきたい?」
 
 
 訊ねられる言葉に、ふっとぼやけていた思考が戻った。父の腰を掴んでいた手を離して、その腕を父の首へと回す。
 
 
「やだ…パパに、動いてほしい…」
 
 
 そう囁いた瞬間、父の口元に薄い笑みが滲んだ。
 
 
「どう動いて欲しい? ゆっくり動く? それとも激しく? 浅いところ? 深いところ?」
 
 
 言葉で辱められていると思う。だけど、それが堪らない。近所でも優しくて良い父親だと有名な父が、息子を身体でも言葉でも陵辱しているなんて、一体誰が想像するだろう。
 
 
「……ぜんぶが、いい」
 
 
 恥じらいに視線を伏せながら、それでも貪欲な言葉を吐き出す。途端、ぐんっと伸び上がるように腰を深く押し付けられた。
 
 
「ひ、ィんッ!」
 
 
 腰骨を掴まれたまま、先端で奥をぐりぐりと抉られる。ねっちりと奥をこねられて粘膜を柔らかくほぐされていく感覚に、下腹が痙攣したように震えた。
 
 
「あ、ぁ……奥、おく、すごいぃ…」
 
 
 声がとろける。先ほど一度イッたおかげか、今はゆっくりと浸るような快楽が心地よかった。脳味噌の芯がじんわりと溶けていくような浮遊感すらある。
 
 
「暫くしてなかったから、奥のほうが少し固くなってるね。今ほぐしてあげるから」
 
 
 奥を連続してコンコンと先端で叩かれると、咽喉の奥からしゃっくりのような声が溢れた。そのまま、ぐりゅっと陰茎を根本から回されるともう堪らない。
 
 
「っや、ぱぱの、パパのがぁ…」
「パパのが?」
「…おれの中の……行きどまり、ぐりぐり、してる…」
 
 
 自分の言葉の淫猥さに目が潤む。涙目で見上げると、父は愉しげに口角を吊り上げた。
 
 
「それは、して欲しいってこと?」
 
 
 その問い掛けに応える間もなく、次の瞬間、一気に奥をガツガツと乱暴に突かれ始めた。根本まで入れたものを、それでも奥へねじ込むように突き上げられる。奥の更に行き止まりを巨大な亀頭にぐぽぐぽと拓かれて、堪え切れず悲鳴があがりそうになった。
 
 
「ヒぃぃいッっつ、…ッん゛んんんん゛ッ~~!!」
 
 
 絶叫を漏らしかけた口を、父の唇で強引に塞がれる。どっしりと圧し掛かられたまま、全体重を掛けるようにして奥の行き止まりを陵辱された。結腸まで犯し尽くされる壮絶な快感に、宙に浮かんだ爪先がビクビクと痙攣して止まらない。
 
 
「ふ、ぶっ…ぅヴぅぅうんんぅー…!!」
 
 
 あまりの責めに眼球が裏返りそうになった頃、ようやく結腸責めが止まった。解放された唇から、だらだらと締りなく唾液が零れ落ちる。下顎まで唾液で汚したまま、高臣は定まらない視線で父を見上げた。
 
 
「高臣、またイッちゃったの?」
 
 
 含み笑いを漏らしながら、父が高臣の陰茎へと手を伸ばす。我慢汁と精液にまみれた陰茎は、締まりの悪い蛇口のようにだらだらと精液を垂れ流していた。精液が漏れっぱなしのまま、止まらない。
 
 
「女の子みたいにイキっぱなしになってるじゃないか。そんなに奥を犯されるのが好き?」
「…す、きぃ…」
 
 
 口元が勝手にへらへらと笑みを浮かべる。緩んだ笑みを浮かべたまま、高臣は父の陰茎を咥え込んだ中をきゅうきゅうと強請るように締め付けた。
 
 
「…パパ、…もっと……めちゃくちゃ、にして……」
 
 
 羞恥を堪えながら、どこまでも貪欲に強請る。父の唇が笑みを浮かべた次の瞬間、ぐんっと膝裏を胸元まで抱え上げられた。持ち上げられた尻に、半ばまで引き抜かれた父の陰茎がぐぼんと濁った音を立てて一気に突き込まれる。
 
 
「っア、ぁあ゛んッ!!」
 
 
 咄嗟のことで声が押さえられなかった。慌てて両手で口元を覆ったと同時に、激しい律動が開始される。膝裏をキツく押さえられたまま、ぐぽぐぽっと粘着いた音を立てて、先端まで引き抜かれた陰茎が根本まで突っ込まれる。その度に前立腺が滅茶苦茶に擦られて、激しい快感に脳髄が焼かれた。
 
 
「ん゛ッ! んぶっぅ! んぐゥッ、ん゛んん゛~~…!」
 
 
 涙で濡れた視界に、自身の尻に父の陰茎が出入りしている様が映る。赤黒く長大なそれが粘液の糸を引きながら出たり入ったりを繰り返している光景は、酷く卑猥で醜悪で。それなのに、それが父のものだと思うだけで、はちきれそうなほどの喜びを感じた。
 
 パパ、パパ、と胸の奥で叫ぶ。すき、だいすき、愛してる。俺のパパだ。俺だけのパパだ。
 
 その声は聞こえてないはずなのに、父は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった高臣の顔を見て、淡く微笑んだ。
 
 
「高臣、愛してるよ」
 
 
 応えてくれる声に、目の前が真っ白になるくらいの愉悦が込み上げた。腰が震えて、先ほどからイキっぱなしだった陰茎から再び白濁が吐き出される。びゅくびゅくと腹の上に吐き出される度に、父を咥え込んだ粘膜が物欲しげに収縮するのを感じた。強弱をつけて陰茎をしゃぶられる感覚に、父が息を詰める。
 
 
「はっ、ぁ…」
 
 
 色っぽい息と共に、内臓に熱いものが叩きつけられるのを感じた。体内の奥深くを、父の精液で汚されている。そう思った瞬間、口元に震えるように笑みが浮かんだ。
 
 
「ぁ…パパの…でて、る……」
「うん、高臣の奥のところにいっぱい出してるよ」
 
 
 父の精液は大量だ。一度の射精の量が多くて、中に出されているのがよく分かる。陰茎が中でぶるっと震える度に、奥にビシャッと叩きつけられるのが堪らない。
 
 もっといっぱい出して欲しくて、片手を伸ばして父の睾丸を掴む。掌で揉み込むように弄くると、その拍子にドクドクッと大量の精液が腹の奥に押し込まれた。その感触にうっとりとしていると、窘めるように父に額を小突かれる。
 
 
「あんまり悪戯するんじゃないよ」
「だって、ぜんぶ、欲しぃ……」
 
 
 拗ねたように呟くと、父はまだ硬い陰茎を前後に動かした。ぐちぐちと出されたばかりの精液が粘膜と擦れて粘ついた音を立てる。
 
 
「ぁあ、んッ!」
「高臣は一回で終わる気なの?」
 
 
 耳元に囁かれる言葉に、思わず目が輝く。
 
 
「やだ、まだしたい」
 
 
 含み笑いで囁き返すと、父の甘い眼差しが向けられた。舌を伸ばすと、ちゅっと音を立てて吸ってくれる。深く口付けたまま、緩やかな揺さぶりを楽しむ。いつの間にか、父の性器は硬さと太さを取り戻していた。再開の気配に父の背中にぎゅうっとしがみつくと、ゆっくりと両腕を解かれた。
 
 
「ん、今度はちゃんとベッドでしようか」
「やぁ、パパの抜きたくない…」
「ベッドに行くまで一分もかからないよ」
「でも…」
 
 
 愚図りながら涙目で父を見上げる。父は一瞬困ったように眉尻を下げた後、高臣の頬に口づけて囁いた。
 
 
「もう一回だけだよ」
 
 
 笑みを浮かべるよりも早く、奥までねじ込まれた陰茎に高臣は歓喜の声を上げた。
 
 
 
***
 
 
 
 結局、玄関で二回、ベッドで二回、風呂場で一回繋がって、気が付いたら夜になっていた。長丁場の交接のせいで、終わった頃には高臣も父もへとへとに疲れ切っていた。
 
 夜ご飯に、宅配で寿司とラーメンを頼んで、二人で向かい合って食べる。久々に満たされたおかげか、高臣だけでなく父も至極ご機嫌で、和やかな食卓になった。
 
 その間に数回、父の携帯がメールの着信音を鳴らした。父はその度に席を外して、数分後に戻ってくる。きっと部下からのメールなんだろうと思う。
 
 
「仕事、忙しい?」
 
 
 リビングに戻ってきた父へと訊ねる。父は一度考えるように首を傾けた後、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべた。
 
 
「普通かな。今は特に大きな事件があるわけでもないし」
「そうなの? でも、昨日女子大生がストーカーに殺されたとかってニュースになってたよ」
「あれはうちの警察署の管轄外だから、今のところは僕の仕事とは関係ないかな」
 
 
 ふぅん、と小さく相槌を打つ。高臣が座っているソファの隣へと、父が腰を下ろす。
 
 
「よっこらしょ」
 
 
 わざとらしい言葉に、思わず笑いが零れた。ソファに背を押し付けるようにして、小さく笑い声を漏らす。
 
 
「ふ、ふふ、おじさんっぽい」
「もうおじさんだよ」
 
 
 にこにこと笑いながらそんな事を言う。
 
 
「まだ三十六じゃない」
「十八に比べたら、三十過ぎは十分おじさんじゃないかな?」
 
 
 そんな事を言いながら、微かに窺うような眼差しで高臣を眺めてくる。その眼差しを見返しながら、高臣は微笑んだ。
 
 
「百歳のおじいちゃんになっても好き。だいすき。ずっとエッチしたい」
 
 
 父の肩に頬を擦り寄せながら、甘えるように呟く。途端、父の小さな笑い声が聞こえてきた。
 
 
「百歳でエッチは厳しそうだなぁ」
「口でいっぱいしゃぶって、乗っかってあげるから」
「その時は、高臣も八十二歳だよ。上で動いたりなんかしたら、ギックリ腰になっちゃうんじゃないかな」
 
 
 思わず、笑い声が弾けた。想像するだけで胸が躍る未来だ。
 
 二人して笑い合っていると、ふと電話の着信音が聞こえた。固定電話の方だ。父よりも早くソファから立って、子機へと手を伸ばす。通話ボタンを押すと、覚えのある声が聞こえた。三ヶ月ぶりに聞く声だ。
 
 
「あ、母さん? 久しぶり。あぁ、そう、俺。高臣」
 
 
 喋り掛けてくる声に相槌を返しながら、ソファへと戻っていく。耳に子機を押し付けたまま、父の太腿に後頭部を乗せるようにして仰向けに寝転がる。
 
 
「え、あぁ、ありがとう。もうニュースになってたんだ。そう、優勝した。うん、そうだよ。父さんが応援に来てくれた。夜は、寿司とラーメン。はは、ごちそうだろ」
 
 
 会話を続けたまま、視線はじっと頭上の父を見上げた。父は、柔らかな眼差しで高臣を見下ろしてくれる。片手を伸ばすと、そっと父が指を絡めてくれた。指を絡めたまま、唇を動かす。
 
 
「うん、平気だって。何にも困ってないし、家も綺麗だし、ご飯も父さんと交代で作ってるしさ」
 
 
 何気ない口調で、安堵させる言葉を次々と吐き出す。それなのに、会話の終着点は絶対に母の懇願へとたどり着くのだ。電話口の先で、母が「ねぇ、高臣、やっぱり…」と切り出すのを聞きながら、高臣は握り締めた父の手にぎゅっと力を込めた。
 
 
「……母さん、だから、俺はそっちの家に行く気はないって何回も言ってるだろ? 母さんが心配なのは解るけど、岡本さんだって、涼介も香奈だって、俺がいきなりそっちの家族に混じっても困るだけだよ」
 
 
 諭すように言葉を漏らす。母の沈んだ声を聞きながら、高臣はもどかしさに奥歯を鈍く噛み締めた。歪んだ頬を父の指先が宥めるように撫でてくれる。それだけで、ささくれだった心が和らぐ。
 
 
「とにかく、俺は今の家がすきなんだ。父さんとも仲良くやってるし、ここを離れたくないんだよ。俺のこと気にしてくれて嬉しいけど、本当に大丈夫だからさ」
 
 
 父の目をじっと見上げる。優しくて、高臣を包み込んでくれる眼差し。父から子へと向けられる無条件の愛情と、恋人としての絶対的な愛情。
 
 大丈夫、うん大丈夫だ。父は高臣を愛している。高臣も父を愛している。その事実さえあれば、他には何も必要ではない。
 
 
「あぁ、うん、わかった。また今度、島路屋のパフェでも食いに行こう。あれ男一人で食いに行くの恥ずかしいんだよ。ふは、は、そりゃ母さんの奢りに決まってんじゃん。俺っていい息子だろ? え? あ、解った。じゃあ、父さんに代わるな」
 
 
 子機を差し出すと、父は高臣の頬を撫でていた手でそれを受け取った。父の和やかな声が聞こえる。その声音には、離婚した夫婦のギスギスとした雰囲気は感じられない。旧知の友人に語りかけるような、親しみの篭もった口調だった。
 
 仕方がない事だというのに、むくむくと胸の奥から嫉妬心が湧き上がってくる。絡めていた指を解いて、ソファの下へと降りる。
 
 そのまま父の膝の間に身体を潜り込ませて、高臣は両手を父の股間へと伸ばした。スウェットのズボンをずり下ろして、芯のない陰茎を取り出す。その高臣の動作に、父が僅かに目を見張る。
 
 父の目を見上げたまま、柔らかな陰茎の先端へと高臣は舌を這わせた。ぺちゃっぺちゃっと卑猥な水音が響く。
 
 父は電話を続けたまま、口角を淡く吊り上げた。細められた眼差しには、再び暗い欲望が灯り始めている。その眼差しにぐらりと世界が歪んでいくような目眩を覚えながら、高臣は甘やかに囁いた。
 
 
「パパ…」
 
 

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