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53 見世物

 
 正門をくぐった瞬間、四方八方からけたたましい歓声に包まれた。見上げると、頭上から色とりどりの花びらが降り注いでくるのが見える。馬車の上から見下ろせば、何百人もの民たちがまるで神でも仰ぎ見るかのように葛之宮と金田を見つめている視線が在った。キラキラと輝く瞳には、憧憬と希望が満ち満ちている。
 
 期待を隠そうともしない眼差しに圧倒されながら、葛之宮は隣に座る男へと声を掛けた。
 
 
「これは…凄いですね」
 
 
 同意を求めても、金田は無言のままだ。唇をヘの字にへし曲げて、いかにも仏頂面といった表情を隠そうともしない。天道が用意した衣装に合わせるためか、短い前髪が後方へとザックリと撫で付けられている。その髪型は、より一層金田の雰囲気を凛然として見せた。
 
 金田が身に纏ったマントが秋風に吹かれて、僅かにひらめく。その柔らかな揺らめきを視界の端に映しながら、葛之宮はそっと唇を開いた。
 
 
「まだ怒ってらっしゃるんですか?」
「怒っていない。ただ反吐が出そうなだけだ」
 
 
 ピシャリと冷たい返答が返ってきた。あらぬ方向を眺めていた金田がようやく葛之宮と目を合わせる。苛立ちを含んだ刺々しい眼差しだ。同時に「英雄さま!」と口々に叫ぶ声が聞こえた。その叫び声に、金田の眼差しがますますキツくなる。英雄さま、という言葉の滑稽さに、葛之宮まで笑い出しそうになる。
 
 どうやら民衆たちには、僅か二百名の兵で何千の敵兵を足止めし、なおかつ二十名程度の兵で四百の敵兵を打ち破った最強の部隊と伝えられているらしい。その上、葛之宮と金田にいたっては、たった二人で敵本部から我が国の民を助け出した清廉潔白かつ勇猛果敢な人物と思われているようだ。あまりにも過大過ぎる評価だと思う。
 
 
「何なんだこいつらは。英雄さま英雄さま、って馬鹿の一つ覚えみてぇに叫びやがって。気色悪くて、鳥肌が立ちそうだ」
 
 
 悪寒が走ったかのように、金田が背筋を小さく震わせる。その様子に思わず苦笑いを浮かべながら、葛之宮は宥めるように言った。
 
 
「あと少しだけ我慢して下さい。ここで問題を起こして、天道殿の機嫌を損ねたら面倒です」
 
 
 そう耳元に囁くと、金田は不快感も露わに下唇を噛んだ。その様子からして、多少の自制は利いているのだろう。金田の様子を窺いながら、葛之宮は先ほどの天道との遣り取りを思い出した。
 
 
『神殺し』
 
 
 と天道は言った。この国の神を殺すつもりなのだと。その意味を訊ねようと葛之宮が唇を開くと、天道は唇に人差し指を当てて首を小さく左右に振った。そうして「詳しい話は天都に着いてからお話します」と言ったのだ。困惑を浮かべる葛之宮の前で、金田は相変わらず不機嫌そうな表情を浮かべて「反逆者が」と呟いた。反逆者という言葉の意味を、葛之宮は理解したくなかった。自分が何か酷くおぞましい渦の中へと巻き込まれていく予感がして、考えることが恐ろしかった。
 
 胸中に沸き上がってきた怖気を隠すように、葛之宮は華やかな道中へと目を向けた。誰もが笑顔を浮かべて、無理矢理作り上げられた英雄二人を見つめている。それらの視線に晒されても、葛之宮は自分を英雄などとは欠片も思えなかった。自分は出兵した時から何一つ変わらない、臆病者の兵士のままだ。
 
 止めどなく降り注ぐ花びらへと掌を掲げて、葛之宮は自分へと言い聞かせるように呟いた。
 
 
「それでも歓迎されているだけ良いと思わなくては。負け戦の部隊は、民衆から石を投げられることもあるんですから」
「部下を百人以上も死なせたんだ。いっそ石を投げられた方が腑に落ちる」
 
 
 髪の上に落ちてきた花びらを雑に払いながら、金田が唸るように呟く。
 
 
「一人殺せば鬼畜扱いのくせに、百人殺せば英雄か。人殺しを英雄なんざ呼ぶなんて狂ってやがる」
 
 
 苦虫走った金田の横顔を見つめて、葛之宮はぽつりと呟いた。
 
 
「貴方が殺したのは敵です」
「部下を死なせたのは、殺した内には入らないのか? それはそれは随分と甘い勘定だ」
 
 
 皮肉るように金田が肩を揺らして嗤う。歪んだ頬を見つめたまま、葛之宮は言い聞かせるように続けた。
 
 
「何とでもおっしゃって下さい。それでも生き残った者は皆、貴方に感謝しています。貴方の指揮は正しかったのだと信じています。それだけは忘れないで下さい」
 
 
 葛之宮がそう言っても、金田の表情は晴れなかった。虚空を睨み付けたまま、独り言のように金田が呟く。
 
 
「一体この世界の誰が、俺の選択が正しかったと証明できる。生きるべき人間が生き残って、死ぬべき人間が死んだのだと、誰が証明できる」
 
 
 それは問い掛けというよりも、この世界に対する呪詛のように聞こえた。誰にも証明できない、証明できるわけがない事柄に対する悔恨だ。それは葛之宮の疑問でもあった。
 
 袴田少尉が死んだのは正しかったのか。スズメが死んだのは正しかったのか。他の何百という仲間が死んだのは――ひとりでも多く生き残る道はなかったのか。何度問いかけても答えは出て来ない。この残酷な世界に『答え』はなく、『結果』しか存在しない。多くの仲間が死んだという結果だけしか。
 
 無意識に、マントの影で金田の手を掴んでいた。金田が僅かに眉を跳ねさせて、横目で葛之宮を見遣る。
 
 
「貴方だけで背負わないで下さい」
「何を言っている」
「僕も将校です。部下が死んだのは僕にも責任があります」
 
 
 ふ、と金田が鼻で嗤う。細められた眼差しには、葛之宮に対する侮蔑が滲んでいた。
 
 
「だから、どうした。今更、責任の所在なんて考えちゃいねぇよ。俺は、死者に対して罪悪感を抱いているわけじゃない。ただ、自分の無能さに腹を立ててるだけだ。お前と傷の舐め合いをするつもりはない」
 
 
 吐き捨てて、金田はまるで汚れでも払うかのように葛之宮の掌を振り払った。そうして、金田は薄ら笑いを浮かべたまま、こう続けた。
 
 
「寝たぐらいで俺の理解者を気取るな、葛之宮大尉」
 
 
 冷酷な言葉が杭のように心臓に突き刺さる。不意に、猛烈な羞恥に襲われて、目の奥がカッと熱くなった。
 
 金田の言うとおりだと思った。葛之宮は思い上がっていた。身体を与えられたから、葛之宮は金田に心をも許されたと思っていた。自分がその心の内側に入れてもらえたのだと。だが、それはとんだ勘違いだった。葛之宮はまだ何も受け入れられていない。金田にとって葛之宮はただの部下であり、気まぐれな性欲処理の相手でしかない。
 
 それでも、込み上げてくる疑問から葛之宮は唇を開いた。
 
 
「なら、なぜ貴方は僕を選んだのですか」
 
 
 問い掛けた言葉に、思いがけず金田が目を大きく開いて葛之宮を見つめる。
 
 
「苗代の双子でもなく、従順な部下でもなく、生意気で憎らしい部下を相手に選んだのはなぜですか」
 
 
 こんな事をこんな時に訊ねるべきではないと解っている。相変わらず民衆は大声で歓声を張り上げ、英雄たちを讃えている。その英雄二人が馬車の上でこんな生々しくも汚らしい話をしていると知ったら、どう思うのだろう。それを考えると、口元に歪んだ笑みが滲んだ。身の程知らずな期待を与えられるぐらいなら、いっそ軽蔑して欲しいと思うのは、愚かな考えだろうか。
 
 金田の唇が開かれる。だが、その唇が言葉を発する前に、馬車の下から悲鳴にも似た女の叫び声が聞こえてきた。
 
 
「どうか! どうか、教えて下さい!」
 
 
 慌てて視線を落とすと、馬車に取りすがる女の姿が見えた。二十代前半ぐらいだろうか。背中まで伸びた黒髪が清楚な、瓜実顔の女だった。周りの兵士が馬車から女を引き剥がそうとしている。その光景に、葛之宮は反射的に叫んだ。
 
 
「乱暴をするな!」
 
 
 葛之宮の叫び声に、兵士たちが戸惑った様子で女から手を離す。女は馬車と小走りに併走したまま、その両腕にしっかと抱いていた物を葛之宮へと差し出した。薄っぺらい一枚の紙だ。だが、それを見た瞬間、葛之宮は凍り付いた。
 
 
「夫の袴田誠一です。先ほどからずっと探しているのですが見つからなくて……一緒にお戻りではありませんか? それとも、二手に分かれてお戻りなのでしょうか。きっと、そうなのですよね…?」
 
 
 一枚の紙――写真に写っていたのは、黄半島の戦いで戦死した袴田少尉の姿だった。婚礼の時の写真だったのだろう。白黒の古びた写真には、紋付き袴を着た袴田少尉が照れくさそうに笑っている姿が写っている。
 
 そういえば、最初会った時に、眩しいぐらい白い歯だと思ったことを思い出した。女の子が好きなのだと公言しながらも非常に愛妻家で、結婚記念日には泥だらけのまま花束を持って帰省しているとも聞いた。その袴田少尉を夫だという女性――
 
 袴田夫人の瞳からは、ぽろぽろと涙が零れ落ちている。頭では、既に夫がどうなったか解っているのだ。だが、それを理解したくないが故に、馬車に取りすがってまで訊ねている。ただ、夫が生きていると誰かに言って欲しくて。
 
 
「袴田少尉は…」
「彼は戦死しました」
 
 
 言いよどむ葛之宮を押しのけるようにして、金田が身を乗り出して言う。そうして、前方の御者へと「馬を止めろ!」と怒鳴るように叫んだ。馬車が止まると、金田はマントを翻して馬車から飛び降りた。まだ左足の傷は完治していないだろうに、痛みを感じさせない動きだ。そのまま、呆然と立ち尽くす袴田夫人へと大股で近付いていく。その後を追って、葛之宮も慌てて馬車から降りた。
 
 袴田夫人の前で立ち止まると、金田は唇を開いた。
 
 
「袴田少尉は、黄半島の戦闘で戦死しました。彼は百人におよぶ部下を立派に指揮し、勇敢に戦いました。誰にも恥じることのない死に様です」
 
 
 朗々と響く金田の声に、いつの間にか周囲の喧噪は静まりかえっていた。誰しもが耳を澄ませて、二人の遣り取りに聞き入っている。
 
 金田が問い掛けるように呟く。
 
 
「戦死報告書をお送りしましたが届いてはいませんか」
「…届いて、いません…。夫の…袴田の遺体は…」
「連れて帰れませんでした。彼だけでなく、ここにいる者たち以外全員、まだ黄半島に残っています。彼らの遺体を埋葬することすらできていません」
 
 
 埋葬すらという一言を聞いた瞬間、袴田夫人は顔をくしゃくしゃに歪めた。そのまま地面に膝を付いて、わっと声を上げて泣き出す。自分の夫が埋められもせず野晒しで腐っていると知って、平静を保てるわけがなかったのだろう。
 
 金田がゆっくりと地面に膝を落とす。俯く袴田夫人の肩へと掌を添えて、金田は小さな声で囁いた。
 
 
「貴方の元に、彼を連れて帰れなくて申し訳ない」
 
 
 許しを乞う言葉というよりも、それは祈りの言葉のように聞こえた。葛之宮は金田の横に膝を落としながら、袴田夫人へと語り掛けた。
 
 
「…私は、袴田少尉のもとで戦いました。彼はとても勇気のある方でした。突撃の直前まで、兵士たちに生き抜く術を教えようとしていた。彼と一緒に戦っていたからこそ、私は今もここに居られるんだと思います。本当の英雄は、彼のような人だ。……それなのに、一緒に帰ることが出来ず、本当に申し訳ございません」
 
 
 葛之宮は、地面に平伏すように深く深く頭を下げた。その瞬間、走馬燈のように死んだ者たちの姿が頭を過ぎった。袴田少尉、スズメ、共に戦った仲間たち。不意に、耐え難い悲しみが込み上げて、背筋が小さく震えた。誰もが日々を必死に生きていた善良な人たちだった。なぜ彼らが死ななくてはならなかったのか。
 
 気が付いたら、背中へと触れる感触があった。顔を上げると、袴田夫人が葛之宮の背を静かに撫でていた。
 
 
「どうか…どうか顔を上げて下さい。何もお二人が謝罪されることなどありません…。家族を失った方はたくさんいらっしゃるというのに、私一人だけ取り乱してしまい申し訳ございませんでした」
 
 
 涙声ながらも凛とした声音だった。袴田夫人は背筋を伸ばすと、深々と頭を垂れた。
 
 
「お二人のような方と共に戦えた袴田は幸せ者です。こんなにも死を悼んでくれる上官に恵まれることは滅多にありません。遺体が戻ってこないことぐらい何てことはありません。誰かの心にあの人の姿が遺っている事こそ、よっぽど…よっぽど幸福なことです」
 
 
 気丈に言葉を紡ぎながらも、袴田夫人の瞳からは涙がぽろぽろと溢れ出していた。その涙を見た瞬間、葛之宮は強く、心臓を突き上げるほど強く思った。
 
 もう戦争は嫌だ。一日でも、一秒でも早く、この戦争を終わらせたい。この先、どんな凄惨な道を進むのだとしても――
 
 
 
***
 
 
 
「凱旋は楽しめましたか?」
「くたばれ畜生が!」
 
 
 馬車から降りるなり天道へと滑らかに吐き出された金田の暴言に、葛之宮はぎょっと目を見張った。咄嗟に左右を見渡す。いつの間にか後方に続いていた部隊とは別れたのか、広い庭園に着いていたのは馬車に乗っていた金田と葛之宮だけだった。巨大な日本家屋の庭には、天道と数名の幽鬼兵が立っている。
 
 金田が続け様に噛み付くような声を上げる。
 
 
「巫山戯るな。手前よくもあんな茶番劇やらせやがって」
「茶番劇? 感動的な英雄の美談ではないですか。戦死者の身内にも慈悲の心を忘れない、まさしく英雄の見本です」
 
 
 飄々とした天道の台詞に、金田の顔がまるで赤鬼のように紅潮して行く。今にも天道に飛びかかって、全身を引き裂きそうな形相だ。
 
 
「手前、隠しやがったな」
「隠した? 一体何をですか?」
「袴田の戦死報告書だッ!」
 
 
 張り裂けるような叫び声だった。その言葉を聞いた瞬間、葛之宮の背筋に奇妙な悪寒が走った。金田が何故これほどまでに激昂しているのか、その理由が解ったからだ。
 
 
「俺は、臼長井基地から確かに袴田の戦死報告書をあいつの妻宛てに送った。それなのに、それが袴田の妻に届いていないと言う」
「郵便事故でも起きたんですかねぇ」
「しらを切れると思うな。お前、今日の茶番劇のために、わざと袴田の戦死報告書を届けなかったな」
 
 
 憤怒を孕んだ金田の声音に、天道は一度考えるように視線を宙へと向けた。暫くの沈黙の後、天道が呟いた。
 
 
「紙切れ一枚あろうがなかろうが、死んだ事に変わりはありません。死んだ人間は生き返らない」
 
 
 まるで人一人を切り捨てるような声音だった。その言葉に、不意に憎悪が込み上げてくるのを感じた。唇が勝手に動く。
 
 
「その紙一枚が届かないことで、彼女が長く苦しむことになったとは思わないんですか」
 
 
 夫が音信不通で生きているか死んでいるか判らない状況が続く。僅かな希望を捨て切れず、凱旋中の馬車に縋ってきた彼女の気持ちが酷く痛ましく、悲しかった。
 
 天道が葛之宮へと視線を向ける。その眼差しは何の感情も映し出していなかった。罪悪感も、だからといって居直るような傲岸さも見えない。ただ与えられた役割をこなしている、という事務的な目をしていた。
 
 
「先ほどの凱旋に居たものは、きっとその胸に希望を抱くことが出来ました。無理矢理用意された英雄ではない、彼女との遣り取りを見て、貴方がたは本物の英雄なんだと心から思えたことでしょう。強く、慈悲深い英雄たちの話は、きっと国中に広がっていきます」
「民衆に希望を抱かせるために、一人の女を絶望に叩き落としたのか」
 
 
 金田が皮肉るように呟く。天道は静かに頷いた。
 
 
「はい。国を存続させるためなら、たかが一人や二人、百人千人の犠牲など安いものです。たとえ今後、袴田少尉の奥方が絶望のあまり自害なさったとしても、私がやった事は間違いではありません。間違っていなかったと言えます」
 
 
 天道の顔は、ぞっとするほど無表情だった。普段笑顔ばかり浮かべているせいか、その無表情には不気味なまでの凄みがある。
 
 
「間違っていなかっただと? 手前は神様にでもなったつもりか」
 
 
 吐き捨てて、金田が鼻で嗤う。その瞬間、天道の顔がぐにゃりと歪んだ。普段は飄々とした狐顔がいまは溶岩を溶かし込んだように醜悪になっている。怒りを露わにして、天道が叫ぶ。
 
 
「国を守るために、手段など選んでいられるかッ!」
 
 
 初めて見る、天道の感情の爆発だった。だが、その発露は一瞬だった。天道は一度大きく息を吐き出すと、扇子を広げて口元を覆い隠した。だが、扇子を持つ指先が微かに震えている。
 
 
「…金田少佐、貴方だって解ってるはずですよ。百を生かすために、十を犠牲にする。今まで貴方が行ってきたのは、そういう事だ。それなのに、なぜ今更私を責めようとしているのですか?」
 
 
 訥々とした天道の問い掛けに、金田が口角を引き攣らせる。
 
 
「気に食わないからだ」
「気に食わない?」
「部下の死を、安っぽい見世物にされるのは我慢ならん。袴田は、俺の部下だ。俺の部下だった」
 
 
 唸るような金田の声音には、執着じみた情念が滲んでいた。ふと、金田が臼長井基地で岸本少佐へと怒鳴っていた姿を思い出す。あの時、金田は兵を見捨てようとした岸本少佐に激昂していた。その時と同じだ。
 
 
「国のために命を懸けて戦った男を、お涙頂戴な見世物にするために利用するのか。それが間違ってないと言うのか。手前の大義名分上では許されても、俺は許さん」
 
 
 金田が肩に付けられていたマントを剥ぎ取る。黒衣のマントを地面へと投げ捨てて、金田は一息に吐き捨てた。
 
 
「お遊びは終わりだ天道。手前がこれから何を企んでいようが、俺には関係ない。手前の勝手にしろ。俺はもう下りる」
 
 
 うんざりだ、と鈍く呟いて、金田はそのまま庭園を横切るように歩き出した。杖も持たず、僅かに身体は斜めに傾いでいる。それでも、立ち止まろうとはしない。だが、その前に立ちはだかる影があった。金田の前に片腕を広げて立ちふさがったのは幽鬼兵の一人だ。見覚えがある姿だ。確か百足と名乗った男だ。
 
 

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Published in 地平の戦争

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