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08 泣きわめく(6)

 
「ひぃ、ぅ…ヴぅー…」
 
 
 腹の奥で得体の知れない生き物が蠢いているような感覚。細長い生き物が内臓の内側をぞろぞろと這い回る感触に、皮膚が粟立つ。
 
 咽喉から漏れる唸り声を殺したくて下唇を噛み締めると、それよりも強い力で唇をこじ開けられる。真樹夫の舌が咥内へ潜り込んできて、小山の思考をぐちゃぐちゃに掻き乱す。
 
 
「んっ…グ、ぅッ…」
 
 
 宥めるような舌の柔らかい動きに反して、後孔に入れられた指の動きは容赦がなかった。突き刺された三本の指が体内で好き勝手に動いている。二本の指で後孔を左右に開かれながら中指の腹で肉壁をぞろりとなぞられると、もう駄目だった。嫌悪感にも似た寒気が背筋を這い上がって来て、反射的に下腹が痙攣する。それは嘔吐の瞬間の戦慄きにも似ていた。
 
 
「腹に力入れんな」
 
 
 耳元に熱い息が吹き掛けられる。そんな些細な刺激にも身体は敏感に反応して、後孔に入った指をきつく締め付けた。言った事と真反対の反応を返す身体に、真樹夫が小さく笑い声を立てる。
 
 
「バカ犬」
 
 
 言っている事は罵言なのに、その声音は何処か優しかった。たったそれだけの事に安心する。微かに息を吐き出すと、その隙を狙ったかのように三本の指が更に奥まで押し込まれた。内臓を抉るような動きに咽喉から素っ頓狂な悲鳴が溢れる。
 
 
「ぃイ、ア゛ッ!」
 
 
 とっさに目の前の首筋へとしがみ付く。真樹夫の首に回った両腕がぶるぶると震えた。怖い。気持ち悪い。どうしようもない。やめて下さい、と叫びそうになるのを真樹夫の肩口に顔を埋めて必死で堪える。
 
 
 体内を指が動く度にくちゃくちゃと濡れた音が響く。先ほどから何度か真樹夫の指に足されているローションの音だ。だが、小山の体内が頑なに外へと押し出そうとしているためなかなか潤いが広がらない。いい加減焦れたように、左右に広げられた指の間から体内へとローションが直接注ぎ込まれる。傾けられたボトルから体内を逆流してくる液体に、咽喉から引き攣った涙声が溢れる。
 
 
「ひぃ、ぃ゛、…や、ヤ、ですッ…! それ、ヤだッ…!」
 
 
 まるで子供の駄々のような言葉が零れる。それに羞恥を感じるだけの余裕もなかった。じたばたと暴れる小山の足首を掴んで、言い聞かせるように真樹夫が言い放つ。
 
 
「我慢しろ」
「で、でもッ…!」
「我慢、できるよな」
 
 
 頭を撫でられて、そんな事を言われたらもう口を噤むしかなかった。女のように足を開かされて、体内に注がれた大量のローションが指で攪拌される。ぐちゃぐちゃと聞こえる音が自分の体内から響いていると思うだけで脳味噌が焼き切れそうなほどの羞恥を覚えた。確かに真樹夫に犯されるのを望んだけれども、こんな恥ずかしさは想定外だ。
 
 
「小山…」
 
 
 掠れた息の合間に、主人の囁く声が聞こえた。涙で掠れた視界の中、真樹夫の顔を見つめる。その瞬間、淫猥に溶けた主人の表情に息を呑んだ。声を出そうと開きかけた唇は、結局何も言葉を発する事が出来なかった。後孔へと突き刺さっていた指が一気に引き抜かれる。その内臓を引き摺り出されるかのような排泄感に、小山は悲鳴をあげた。
 
 
「ヤ、ぁあ゛ぁっッ!」
 
 
 背全面に隆起する勢いで鳥肌が浮かび上がる。あまりの衝撃に両足が空中を蹴り飛ばす。その両膝裏を掌に掴まれた。そのまま、ぐっと体重を掛けられて太股を胸元まで押し上げられる。肺が押し潰される息苦しさに呻く暇もなく、窄まりかけた後孔に熱い塊が押し付けられた。
 
 
 目を見開く。視線の先には、鋭く尖った真樹夫の眼差しがあった。獲物に食らいつくような獰猛な表情。込み上げてきた恐怖に拒絶の声が溢れそうになる。だが、その唇を掌で塞がれる。そうして、衝撃は一呼吸後にやってきた。
 
 
「ッ゛ーーーッッッ!!!」
 
 
 逸らされた咽喉から、まるで断末魔のような押し殺された絶叫が響いた。内臓が硬く太いもので一気に押し開かれた。痙攣する粘膜を左右にこじ開けられて、熱い塊が体内へとずるずると侵入してくる。
 
 眼球の奥でバチバチと火花が散る。まるで体内を焼けた鉄杭で刺されているかのような激痛。あれだけ慣らされたというのに、初体験の身体は侵入してくる異物を拒もうとキツく収縮を繰り返している。
 
 塞がれていた唇を解放された途端、情けなく泣きじゃくる声が溢れ出す。
 
 
「ギッ、ぃぅヴぅ…、ぃ、だぃ、…です…、まきおさっ…いだ、ぃ…ィ゛ッ!」
「…まだ頭しか入ってねぇんだぞ。あんだけ濡らしたのに…お前ん中、キツすぎだろ…。処女どころか、ガキ並みの狭さじゃねぇか…」
 
 
 真樹夫の声も微かに辛さが滲んでいる。性器をギリギリと締め付けられている状態は、真樹夫にも相当な痛みを与えているのだろう。眉間には皺が寄り、額からは脂汗が微かに滲んでいる。
 
 
「ッ、小山、力抜け」
 
 
 耳元に囁かれる言葉に、無我夢中で首を左右に振る。出来ない。出来ません。声に出さないままに、必死に訴える。そうしていると、唇がキスで塞がれた。宥めるように咥内を柔らかくねぶられていると、微かに安堵が込み上げた。震える息を吐き出すと、その呼吸の分だけ腹の奥へと熱いものが押し込まれる。その度に小山はしゃくり声をあげた。
 
 
「ふっ…ぅえ゛、ぇ………」
 
 
 痛い。苦しい。痛い。全身の毛穴から火が噴き出しそうだ。後孔が信じられないくらい奥まで真樹夫自身をずるずると呑み込んでいく。それなのに、まだ全部じゃない。それが怖くて堪らない。腹の奥が熱い。焼ける。自分とは違う鼓動が荒々しく脈打ってる。まるで内臓を内側から喰い千切られているような感覚だった。
 
 
 真樹夫の性器が半分程度収まった頃には、小山は息も絶え絶えになっていた。下半身には殆ど感覚がなく、ただ頭上から雨のように滴ってくる真樹夫の汗を感じた。真樹夫が濡れた前髪を掻き上げながら、荒い呼吸を吐き出す。
 
 
「畜生…お前、喰い絞めすぎだろ…」
「…ぅ、ヴ、…ずん、ま゛せん…、ごめん゛なさっ……」
 
 
 べちゃべちゃに濡れそぼった顔で、必死に謝罪を繰り返す。まともにセックスの相手も出来ない事が情けなくて悲しかった。こんなんじゃ、この人の女にもなれやしないじゃないか。真樹夫にすべてを捧げると決めたのに、何一つとしてあげられない。真樹夫を気持ちよくすることすら出来ない。そんな役立たずな自分が嫌で堪らなくて、両腕で顔を覆い隠す。
 
 
「小山、謝るな」
「だ、だって…お、お゛れっ…こん゛なん、じゃ、…まぎおさんの、女…にもなれ゛な、い…」
 
 
 こんなにも、この人の物になりたいと望んでいるのに。ぐずぐずと情けなく鼻が鳴る。顔を覆う両手を剥がされて、強引に唇を奪われた。咥内を嬲られて、皮膚がぶるりと震える。同時に後孔に中途半端に収めた性器がどくんと大きく脈打つのを感じた。唇がゆっくりと離れる。
 
 
「…少し、いい子にしてろ」
 
 
 静かな言葉に、一瞬息を呑んでそれからこくりと頷く。そうすると、真樹夫の手が小山の萎えた性器へとゆっくりと伸ばされた。小さくなっていた性器を柔く包まれて揉みしだかれる感触にぎょっとする。
 
 
「ふ、ぁッ! ぁ、ま゛、きおさっ…!?」
「前に集中しろ」
 
 
 そう言われても、腹には未だ真樹夫自身が収まったままなのだ。集中しようにも体内の存在に気を奪われて、なかなか性器の感触に集中出来ない。
 
 それでも、丹念に性器を愛撫される感触に、次第に下半身に血流が集まってくるのを感じた。半勃ちになった竿を指先で擦られると、身悶えするような痺れが下半身から這い上ってくる。
 
 
「ん、んぅ…っ」
 
 
 鼻から甘ったれた息が漏れる。ガチガチに強張っていた身体が緩く解けて、体内に熱が戻っていく。左右に押し開かれた足の踵が畳の上を滑る。
 
 
「はァ、…ンん゛ッ!」
 
 
 前に意識が回って、力の抜けた後孔にじわりと性器がめり込んで来る。気が遠くなるような酷く焦れったい挿入だった。性器を弄られてはほんの数ミリ突き刺されて、それを何度も繰り返される。
 
 
 真樹夫のすべてを収めきる頃には、全身が汗だくになっていた。どちらのものともつかない汗で、触れ合う皮膚がぬるぬると滑る。限界以上に開かれた後孔が怯えたように小さく戦慄く。そこに根本まで呑み込まれた真樹夫の性器を想像するだけで目眩がしそうなくらい血が昇った。開かれた両足の間で、真樹夫が荒い息を漏らしている。
 
 
「熱いな、お前ん中…」
 
 
 熱いのは真樹夫の方だ。灼熱の塊を挿し込まれた腹の中が今にも焼け爛れそうだ。震える指先が宙をさまよう。その指先を掴まれて、真樹夫の背中へと回された。
 
 
「ゆっくり動くから、痛かったらしがみ付いてろ」
 
 
 真樹夫の好きなように動いていいのに。こんな犬如きを思いやってくれる主人の優しさが苦しい。
 
 黙って背中にしがみ付くと、酷くゆっくりとした動作で奥を突かれた。根本まで収めたまま、身体の奥をノックするように小刻みに突き上げられる。
 
 
「…んっ、んッ…」
 
 
 息切れのような短い声が反射的に漏れる。痛みは麻痺して、今はただ圧迫感が強い。内臓を象に踏み潰されているような感覚に、咽喉の奥から呻き声が断続的に溢れる。
 
 
「痛い、か?」
 
 
 奥を先端で掻き回されて、下腹がきゅうと引き攣る。震える息を吐き出しつつ首を左右に振る。
 
 
「…だ、ぃじょ…ぶ…です…」
 
 
 掠れた涙声に、真樹夫が薄く苦笑いを滲ませる。小山の虚勢なんかとっくに見抜いてるとでも言いたげな表情だ。
 
 
「ちゃんと、お前のいいとこ探してやるから…」
 
 
 囁かれた言葉の意味が解らない。涙で濡れた目を瞬いている間に、体内の奥深くに潜り込んでいた性器がゆっくりと引き抜かれていく。ずるずると粘膜を擦っていく感触に、小山は真樹夫の背中に必死にしがみ付いた。
 
 
「ひッ、ぃイ…!」
 
 
 尋常ではない排泄感が下腹部から脳天までぞわぞわと這い昇ってくる。衝撃に、踵が宙を蹴り飛ばす。そうして、引き抜かれた分だけ再び奥へと突き刺される。くちゅくちゅと小さな水音を立てながら、緩やかな抜き挿しが始まる。
 
 
「ぁア、ぁ゛…ッ」
 
 
 真樹夫の性器によって、体内でローションが掻き回される粘着質な音が響く。体内の異物感がより強くなる。痛いというよりも苦しい。体内で他人の一部が動くのが気持ち悪い。吐き気を催すような感覚を、真樹夫の背にしがみ付いて必死に堪える。
 
 だが、先端でそこを突かれた瞬間、不意に背骨の中に電流が走った。
 
 
「ッ……ひ、ァ゛ぁアッ!」
 
 
 まるで声帯が裏返ったような甲高い嬌声に、自分自身驚愕した。目を白黒させて、真樹夫を見上げる。真樹夫は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに平静に戻って訊ねてきた。
 
 
「ここがいいか?」
 
 
 率直に訊ねられる言葉に、自分の顔面が真っ赤に染まっていくのを感じた。泣き出しそうに歪んだ小山の顔を覗き込んで、真樹夫がふっと笑う。腰骨を左右から掴まれて、電流の走るそこを先端で弄くり回される。
 
 
「やッ、…ヤア゛ぁッ!」
 
 
 しみが付く背中に無意識に爪を立ててしまう。真樹夫の眉間に皺が滲む。だが、それに気付く余裕はなかった。やらしい腰つきで重点的にそこを嬲られて、咽喉から嬌声が迸る。骨が抜けてしまったかのように、強張っていた身体がくにゃくにゃに溶けていく。力が抜けたところを見計らって、浅かった抽挿が次第に深くなる。
 
 
「ッあ、あ゛っ、…! ま、きお゛、さっ…! ん゛んぅッ!」
 
 
 繋がった部分から響く水音が大きくなる。最初の頑なさが解れて、粘膜がぞろりと真樹夫自身に絡み付くのを感じた。身体の内側が真樹夫の形に変わっていく。先端近くまで引き抜かれて、根本まで一気に突き刺される。最初の緩慢な抽挿とは違う。絶頂に向かうための獣の動きだった。
 
 体内に感じる塊が更に大きくなっている。両足を女のように左右に開かれたまま、狭い粘膜を遠慮なく掻き回される。切迫しているのか、真樹夫の指が腰骨に食い込んでいるのが痛い。でも、それが嬉しい。真樹夫が自分なんかの身体で少しでも気持ちよくなってくれているなら堪らない。
 
 
「お前、なか」
 
 
 荒い呼吸の合間に、独白するような真樹夫の声が遠く聞こえた。
 
 
「意識して動かしてるのか?」
「な゛っ…なに…が……ッ?」
「解らないなら良い」
 
 
 奥への突き上げが激しさを増す。内臓が破れそうだとも思うのに、自分の思考に反して身体は従順に真樹夫の雄を受け容れている。充血した粘膜が収縮を繰り返しながら、真樹夫の性器にキツく吸い付いているのを感じる。そうすると、真樹夫の性器の凹凸まで生々しく感じられて、脳味噌が沸騰するような昂りを覚えた。頭と身体が分離してしまうような危うい感覚に、恐怖と快楽がないまぜになって小山の眼球を潤ませる。
 
 
「ぅあ゛ぁ、……ま、まき、ぉさ、んッ、…!」
 
 
 自らを蹂躙する相手に救いを求める。小山を貶めるのも救ってくれるのも、目の前の男以外にはいなかった。涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃに汚れた顔を見下ろして、真樹夫が微かに笑う。
 
 
「汚ぇ面」
「ァ、ヴぅっ……ご、めん、…なさッ…」
「俺以外に見せたら殺すからな」
 
 
 まるで中学生のような脅し文句に、胸がきゅうと締め付けられる。
 
 背中にしがみ付く指先に力が篭る。荒い突き上げに身を任せて、咽喉から掠れた嬌声を張り上げる。痛みや苦しみが消えて、今身体を満たすのは純然たる熱だ。ただ、熱くて堪らない。掻き回される粘膜がぐじゅぐじゅとぬめった音を立てる。それすらも鼓膜の奥で熱へと変換されていく。
 
 
「ひっ゛、…あ゛ぁあ、ぁぅ…ッ!」
 
 
 ひぃひぃとみっともない泣き声を上げながら、目の前の背に爪を立てる。繰り返される力強い律動に心がバラバラになっていく。
 
 そうして、一際大きく奥を突き上げられた瞬間、熱が弾けた。
 
 
「あ゛、アアぁ゛ああぁッ!!!」
 
 
 咽喉から咆哮じみた絶叫が迸る。体内から尿道を通って、熱い白濁が腹の上へとぶち撒けられる。下半身から這い登った衝撃で後頭部がガクンと跳ねて、背筋が弓なりに反り返った。ビクビクと下腹部と内股が攣りそうな勢いで激しく痙攣している。それに連動するように、真樹夫を包む粘膜がぎゅうと搾られた。
 
 
「ッ…!」
 
 
 真樹夫が小さく呻く声が聞こえた。それと同時に、粘膜が熱い液体でしたたかに濡らされる感触が走った。痙攣する真樹夫の性器が小山の奥にザーメンを吐き出している。
 
 
「あっ、づぃ…! まきぉ、さっ……あつい゛、ぃッ…」
 
 
 もう自分が何を言っているのか解らなかった。内臓が濡らされる感触に怯えたように、力の抜けた両足がばたばたと暴れる。だが、それすらも許さないように内股を真樹夫に押さえ付けられた。もう 根元まで入っているものを更に奥まで押し込まれて、強引に大量の精液を呑まされる。
 
 
「ゥぁ、あ゛ぁ…!」
 
 
 達したばかりで敏感な粘膜に、緩慢な動作で精液を塗り広げられる。絶頂を持続させられるような感覚に、ぶるぶると全身が震えた。
 
 
 すべて吐き出し終わっても、真樹夫は小山の中から出ていかなかった。半ば虚脱した状態で目を閉じていると、ふと頭を触られる感触がした。真樹夫が小山の前髪をくしゃりと撫でている。
 
 
「……お前は、俺の傍にいろ」
 
 
 傲慢な主人のものとは思えない、酷く心細そうな声に涙腺が緩む。
 
 
 傍にいる。傍にいたい。傍にいます。言葉にしないまま、何度も心の中で繰り返す。
 
 
 黙っていると、ぎゅうと背中を抱き締められた。迷子になった子供が母親にしがみ付いているような、さみしい抱擁だった。
 
 

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